ミチノ・ル・トゥールビヨンシェフ道野 正のオフィシャルサイト


by chefmessage
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

還暦だから武者修行

 1年以上続いた奈良での仕事を終えて、解放感でいっぱいの春です。
 週に5日、早起きして豊中の自宅から車で自分の店に向かいます。仕入れがある場合は、いつもの豊南市場に寄ってお買い物。店に荷物を降ろして、近くに借りているガレージに車を入れ、JR環状線で鶴橋へ。そこからは近鉄です。大和八木の次の駅、耳成まで。
 この近鉄がなかなか曲者で、特急に乗る場合は乗車券とは別に特急券を買わなければなりません。これが結構高くて、毎日だと馬鹿にならない。でも、特急優先でダイアが組まれているから、時間を節約しようと思えば乗らざるを得ません。でも、もっとストレスがたまるのが、土曜・日曜。周りは、伊勢神宮や志摩・賢島に出かける旅行者ばっかりなのです。みなさん、旅への期待でうきうきしています。笑顔であふれる観光列車。その中でひとり、仕事に向かうわたし。なんでヴィスタカー(2階建ての客車。小学校の修学旅行以来です。)乗って働きにいかなあかんねん、と、はなはだ気分がよろしくない。このまま宇治山田まで行って、伊勢のボンヴィヴァンで食事したろか、と何度思ったことか。
 帰路は逆の道程で自店に戻り、夜の営業に従事します。本当に時間に追われる毎日でした。だから、指折り数えて終わる日を待ちました。収入が減って、経済的にかなり苦境に立たされるのは明白で、はっきり言って恐怖ですが、それでも待ち遠しかった。そして、ぼくは解き放たれました。

 はらはらと満開の桜から花びらが散り、春風に舞っています。この季節になると、いつも坂口安吾の「桜の満開の下で」を思いおこします。桜の根元には魔が潜んでいる。その魔にそそのかされるように、ぼくは旅に出たくなります。人生の再出発である還暦も迎えたことだし。
 よし、とぼくは自分に気合を入れます。武者修行に出たろ!
 自分の世界を構築し、それをいかに進化させるかだけでぼくは半生を費やしてしまいました。人生も残り少なくなってしまった。それなら、これまで得たものの真価を世に問うてみよう。だから、ぼくは今、いろんな料理人にコラボレーションのフェアをさせてくれるよう申し入れています。ベテランもいれば若い人もいます。フランス料理、イタリア料理、洋食に和食。道場破りの気持ちで挑みますが、あえなく返り討ちにあう危険性もある。それでも。
 何かを得て、そこから生まれたものを返し、さらに何かを得て、また返し。そのようなことが、呼吸するように自然にできたなら、ぼくは更なる高みへ自分を導けるのではないか。

 まず第一弾は、元プログレヨコヤマの横山淳くんと。
 彼がアミューズ、オードブル一品、魚料理を担当し、ぼくがオードブル一品、メインの肉料理、そしてうちのマダムがデザート担当。サーヴィスはうちの原と横山千晴さんが行います。
 横山くんは現在、腎臓病で透析を受けており、週の半分しか仕事ができません。そのため、自分のお店も閉めざるを得なかった。でも、彼はやはり生粋の料理人です。その創作意欲は病を得ても衰えをみせてはいません。むしろ、内圧は高まっているように見受けられます。相手に不足はありません。ともに前衛を自認してきたふたりです。いい仕事ができるのではないかと思っています。

 還暦パーティーのときの挨拶で、ぼくは「もう一花、咲かせてみせます。」と言いました。それを実現するために、ぼくは一歩踏み出そうとしています。どうかみなさん、応援してください。ぼくもまた、なにかをみなさんにお返しできるようにがんばるつもりです。
[PR]
by chefmessage | 2014-04-02 18:17