ミチノ・ル・トゥールビヨンシェフ道野 正のオフィシャルサイト


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 恐るべき暑さもいつの間にか様変わりし、朝晩には涼しい風が吹いて、優しい秋の訪れが感じとれるようになってきました。この秋には話題のお店のオ-プンが続々控えており、僕も楽しみにしているのですが、聞こえてくる噂だけでも大層なもので、北新地にできる、イタリア料理の笠井君がシェフに就任するお店は100席くらいあって、客単価2万円らしいとか、高麗橋のシェ・ワダは内装にも外装にもすごくお金がかかっていて、4万円のコ-スがあるらしいとか、景気って本当に悪いの?とついつい現実を忘れそうな話しがあちらこちらで囁かれていて、僕なんか、羨ましがってしまうのですが、でもそれはそれ、僕は自分のお店をどこにも負けないお店にすべく、秋のメニュ-に、ない知恵を絞っているところです。

 でも、お店を運営していくって、本当に難しい。先の二軒の噂話も、感嘆と共に、それで本当にやっていけるのか?という揶揄の響きも混じって囁かれているような気がします。
夢のレストランって、オ-ナ-シェフにとってもお客さんにとっても同じものなのか?多分、そこには、越えられない一線が確実に存在すると思います。なぜなら、お金がいったりきたりするから。片方は貰う側、もう片方は払う側、同じ立場じゃないんです。どちらが優位かなんて、尋ねる必要も有りません。だから、理想のレストランというのは僕が思うに、両方が歩み寄れる、言葉を変えるなら、互いに相手に敬意をはらえる場所という前提にしか成り立たないと思うのです。払え、でも、払ってやる、でもない場所。でも、それって本当に難しい。僕たちにしてみれば、これだけやってるんだから、と思ってしまうし、お客さんにしてみれば、これだけ出すんだから、と思う。人によって金銭感覚も全然ちがうしね。ただ、お金を払うからお客さんは神様で、だから何でも言うとおりにしろ、っていうのはお断りですね。僕は一応クリスチャンだから。と、それは冗談としても。

 で、僕はといいますと、どちらかというと歩みよらなかったです。そちらから来て下さい、僕はここで誰にも負けないお仕事やってますからっていう。そうして、13年が過ぎたのですが、ある時ハッと気づいたのです。歩みよる必要がないと考えているうちに、お客さんとの距離が随分と開いてしまって、実は僕は一人で悦に入っているだけなんじゃないかと。だから、毎日疲れているんじゃないかと。それは年齢のせいばかりじゃなくて、精神的な新陳代謝ができなくなっているからじゃないかと。ミチノ-裸の王様現象と名付けました。いつの間にか大御所気取りになっているなんてカッコわるいぜ。丁度、若手の新しいマネ-ジャ-も入って、マダムも多少は子育てに余裕ができて、現役復帰したがっているし、やるなら今しかないな、と。

 で、もう一度、お客さん、とくに若い人達との距離を縮めるべく、あるいは、最前線復帰を目指すべく、ミチノの改革は開始されたのであった。以下、実行したことを箇条書きにします。
 1,バタ-を出すことにした。いままで出さなかったんですね、わざと。というのも、その分カロリ-があがるし、こちらとしてはソ-スで食べてほしかったし。でも、やっぱりバタ-塗って食べるとパンっておいしいもんね。ただ、ここでも拘りがあって、バタ-はタカナシの無塩です。これって、日本一おいしいバタ-だと思う。
 2,ソフトドリンクが登場した。ただし、グラピヨンという市販されていないグレ-プジュ-スのみ。でも、料理の邪魔しないし、おいしい。
 3,ワインの持ち込みがオ-ケ-になった。いままで、断固拒否していましたが、僕のところで飲みたいという気持ちも察して。でも、持ち込み料は頂戴いたします。なんせ、ウチにも在庫2,000本あるもんで。あしからず。
 4,毎月第一と第三月曜日にお料理教室も始めた。
 さて、ミチノ革命はまだまだ続く。
 5,ランチ¥2,800,ディナ-¥5,500で、オ-ドブルとメイン料理が選べるようになった。これは画期的です。いままで、選べるコ-スは¥12,000のディナ-だけだったから。ただ、どうしても、一部のお料理で追加料金をいただきます。でないと、赤字になるもんで。
 6,これには、さすがのウチのマダムもおどろきました。なんと、¥1,500のランチ登場。会社のお昼にどうしても利用したいというお客さんのためにご用意した、サラダとメイン、コ-ヒ-だけのコ-ス。ただし、一日10名様のみ。というのもこのランチ、使う食材は夜用と同じだから。売り切れご免。

 なんてことやったら、逆に批判的なご意見もあるようで、ミチノは値段を下げて、レベルも落として金儲けに走ったのではないか、いわく、魂を売ったんじゃないか、なんて。で、お答えします。お金は儲けたいです。でも、値段は下がったのに、やってる仕事も食材も変えなくて儲かりまっか?それにそもそも、値段を下げたという意識はありません。コ-スの幅を広げて、もっとたくさんの人に、僕のお料理をたのしんでもらいたいだけなのです。すくなくともお料理に関しては、どんな新規オ-プンのお店だろうと負けはしないと思っています。だって、この13年間、僕は一歩も後ろにさがっていないもの。それに、変節とも思われかねない数々の変化は、僕としてはむしろ、それらができるようになった分、依怙地さを捨てて、お客さんの気持ちに近づけたという事なんだと思えます。僕はいつでも、昔は良かったなんて思っていないし、今が一番だと考えて生きています。僕自身はいつもアバンギャルド・前衛に位置していたい。時代の空気をリアリタイムで呼吸していたい。そして、最高の仕事をし続けたい。そのためには、受け手が必要なのです。
 
さあ、いかがですか。あとは皆さんの番です。ご遠慮なさらず、もっとお近くに
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by chefmessage | 2002-11-10 22:44