ミチノ・ル・トゥールビヨンシェフ道野 正のオフィシャルサイト


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イトウ再び!

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 ポイントに向かう途中の、橋のうえから川を覗き込んだ名人の額にくっきりタテ皺が現れています。やっぱり水量が多いのでしょうか。「コンディション良くないなぁ。」、前日の雨の影響です。でもこちらはやっとひねりだした連休です。ましてや2年ぶりのイトウ釣り。いまさら後にはひけません。
 2年前にこの川で97センチの大物を釣り上げた顛末は、以前このページに書きました。あれから、何度この川の辺に立つ夢を見たことでしょうか。やっとそれが実現し、われ等が名人こと、旭川グランドホテル副支配人、東海林毅さんとの釣行になったのです。だから名人、釣らしてよ、と僕は祈ったのでした。
 前夜は名人宅にお邪魔して打ち合わせ、その後仮眠をとって午前4時前に出発。すべての準備は整っています。でも、期待しないで欲しいとの言葉に、やや意気消沈、されど名人がいるからと、萎えるこころを励ましてやってきて、なのに名人、その額のタテ皺はないっすよ。よし、ではとっておきのポイントに直行しましょう、ということで再び車に乗り込みました。着いて、胸まであるゴム長はいて、竿・リール・仕掛け一式持って、藪の中に突き進みます。実はこの釣り、これが一番疲れるのです。川に出るまで草木を掻き分けて斜面を降りて行くのですが、なにしろ人が通る場所じゃないから道がない。木に遮られて見通しが悪いから、迷うと延々と歩かないといけないし、変なところに出ても崖になっていたら引き返さないといけません。そのうえ、草や枝は足や竿にからむし、前日の雨で場所によってはぬかるんですべります。そして、やっとの思いで目指す場所に辿り着いたとき、名人の声!「だめだ、降りれない!」。水位がいつもより2,3メーター上がっているため、川原が水没しているのです。崖から竿は振れません。後ろの木が邪魔だし、第一、荷物を置くスペースもない。
 車を止めた場所まで戻ったときには既に両者疲労困憊。でも、そこはわれ等が名人です。「次、行きましょう。」。お疲れなのに済みません。でも、その不屈のサーヴィス精神が氏のホテルマンの実績を築きあげたのでしょう。それではお言葉に甘えて。
 次のポイントも空振り。そして3番目のポイントで、やっと人二人くらい立てれる足場が見つかりました。そこで、左右に竿を振り分けて釣り開始。ここで驚くべき事実を発見しました。僕は川下に向かって仕掛けを投げます。ちょうど真後ろには障害物がないのでバックスイングしやすい。でも名人の背後には木があって、本来なら竿を振れないポジションなのです。なのに名人、一回竿を横に振ったあと前にスイングさせてそれをクリアーしている。大げさじゃなく、神業です。僕はそれを見て、佐々木小次郎のツバメ返し、ってこういう風だったのかなぁ、と釣りとは全然関係ないことを考えていたのでした。
 一投目は水量の多さと、いつもより早い流れをリールを巻く抵抗で感じました。重いのです。そして二投目、巻いていると時々、重さの負荷がグ、グ、と変わることに気づきました。ひょっとして。鼓動が早くなります。慌てず意識を集中させていると、やはりなにかが引っ張っているようです。この緊張が釣りの醍醐味です。またグ、グ。なかなか食い込みません。そういえば、名人、そんな時は引っ張らずすこし糸を緩めて、充分食わせた方がいい、といってたな、と思いだしました。糸を緩めて、頭のなかで数を五つまでゆっくり数えて、一気に合わせました。ヒット!名人が、からまらないように自分の仕掛けを巻き上げながら、無理しちゃだめだよ、でも緩めてもいけないよ、と声を掛けてくれます。そう、ゆっくりゆっくり、楽しいなぁ。やがてよってきたのは、まぎれもなくイトウでした。でも、前回と比べて二周りくらい小型。70センチといったところでしょうか。でも、この悪いコンディションで釣れたんだから文句はありません。その後、名人も一匹ゲット、さすがにしぶといぜ。それぞれ写真撮影した後、リリース。納竿となりました。帰路、名人が「もっと大きいの欲しかったね。」、と何度も繰り返します。でも、あの開高健先生ですら、その生涯で二匹しか釣れなかった魚です。それと並んだんだから、名人に感謝しこそすれ、不満など言う気持ちはさらさらありません。そして旭川到着。再会を期して、固い握手をかわし、名人と別れました。その夜は、今回同行できなかった河原君を悔しがらせるため、かに専門店で大宴会。その後、天皇もお泊りになった名門、旭川グランドホテルで一泊。翌日、帰阪。僕の素晴らしいヴァカンスは終わったのでした。
 二日後、名人から秋味が届きました。お腹にイクラが一杯入っていました。イクラは即、丼となりましたが、身の方は新作料理となりました。大根とサーモンのミルフイユ仕立てがそれです。僕は名人に敬意を込めて考えました。だから自信作です。
 あと、僕がかつてシェフを勤めていたハーヴェストロードハウスの宮下氏から、彼が仕留めた鹿が送られてきます。大宴会で意気投合した島田畜産会長の息子からは知床豚、かに専門店のオーナー、上田登氏からは天然の銀ジャケが送られてくる予定です。秋の新作は北のレアな食材揃い。是非、ご来店のうえ、お召し上がりになってください。長年にわたって培ってきた彼の地の人々との友情が結実した、僕にしか出来ない料理です。
 それにしても名人、あの技はすごかったです。これからも研鑽に励みますので、よろしくご指導、お願いいたします。
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by chefmessage | 2005-09-18 02:58