ミチノ・ル・トゥールビヨンシェフ道野 正のオフィシャルサイト


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タンゴ!

 好きな音楽は何ですか?と聞かれたら、ぼくの答えは「タンゴ!」。車のCDチェンジャーにはピアソラの2枚組みが入っているし、もし無人島にCDを1枚だけ持っていけるとしたら、ギドン・クレーメルの「ピアソラへのオマージュ」にしようと思います。無人島には電気はきてないだろうし、発電機もいつかは燃料がなくなるだろうし、電池ならいつかは切れるわけだから、この質問にはあまり意味がない気がするけど。

 そんなぼくなので、6月3日に豊中の大池小学校で催された、小松亮太さんとオルケスタ・ティピカのチャリティーコンサートには是非行きたかったわけです。本場の人たちを唸らせた小松さんのバンドネオン(アコーディオンみたいな楽器ですね。)聴いてみたかった。結論からいいますと、予約が入っていたので行けなかったのですが。

 このコンサートを主催したのは、ムコ多糖症ネットワークというグループで、ムコ多糖症というのは子どもの難病です。治療を受けないと、成人になる前に力尽きる病気で、でも、いまだ治療薬が日本では認可されていないらしい。まったく、お役所仕事はどうなっとるのか、と考えた人たちが、その患者のひとりである中井耀くんの名を掲げて、「耀くん基金」というのを設立し、治療薬開発のための募金運動を展開しています。小松さんは、その発起人の一人であることから、耀くんの通う大池小学校でのコンサートが実現された、という訳です。
 耀くんは、うちの長女ひかりちゃんと同じ年で、いっしょの保育所にいってました。だから、親同士も知り合いで、うちの奥さんは、骨髄移植がムコ多糖症に有効ということを聞いて、有志と骨髄バンクの呼びかけを豊中駅で行ったこともあります。だから、ぼくにとってもけっして人事ではない。
 で、このコンサートに出演する皆さんに、当日のお昼ごはんを寄付替わりにテイクアウトしてくれないか、という話になったのです。

 正直、ぼくは困りました。何故なら、ぼくはただでは仕事をしたくないからです。
 これを読んだ方に、なんてケチくさい奴だ、と思われるかもしれません。「かわいそうな子どもたちのためにみんなが無料で奉仕しようとしているのに。」。
 でも、ぼくは難病の子どもたちを「かわいそう」だと思ってはいけない、と考えています。その子どもたちのご家族に対しても同じ気持ちです。子どもたちは、自分の病気に個(個人)、あるいは孤(孤独)として立ち向かわねばなりません。残念ながら誰もかわってあげられない。そして、ご家族の苦しみも他人には背負えない。第三者としてぼくたちにできることは、こころから敬意を表し、自らもまた他人と代われない個、あるいは孤としての宿命を抱えたまま行動することだと思います。

 ぼくは、演奏家の皆さんに、いままで食べたことのないおいしいお昼ごはんを提供したいと思いました。ぼくになら出来るかもしれない。ならば、やっぱり無料ではできません。そこには、ぼくの仕事に対する敬意が欠けていると感じられたから。だから、一人前¥1,000頂戴する旨お伝えしました。仕事として受けた以上は、全力をつくします。それが互いに敬意を表することだとぼくはいつも考えているから。
 さて、コンサートはずいぶん盛況だったと、うちのマダムから聞きました。ぼくのランチは喜んでもらえたかなぁ。多分、「これおいしいね。」とかなんとか話しながら、あっという間になくなっただろうと思います。それでいい。でも、ぼくの作ったお昼ごはんは、演奏家たちのエネルギーに確実になったはずです。ぼくはこの仕事長いあいだやってきて、そのことだけは確信しています。そして、当日の演奏で多くの人が感動し、それとともにムコ多糖症が認知されたのなら、それはぼくの喜びでもあるのです。
 だからぼくは、その日の11名分のテークアウトの売り上げを、感謝を込めて「耀くん基金」に寄付します。
 聴けなかった小松さんの演奏は、自費でCD買って、疲れたときに聞くことにしましょう。癒されたいなら、音楽はやっぱりタンゴ!です。                          
レザール・サンテ! オーナーシェフ 道野 正

ムコ多糖症支援ネットワーク「耀くん基金」ホームページ:http://www.muconet.jp
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by chefmessage | 2006-06-18 03:10