ミチノ・ル・トゥールビヨンシェフ道野 正のオフィシャルサイト


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お答えします!

 先日、京都のラ・プレーヌ・リュヌというレストランに食事に行きました。ある雑誌で、元オークラ京都ホテルのピトレスクで7年修行した若い人がシェフをやっているお店、と紹介されていて興味があったのと、畏友の早川佳毅君が推薦していたので行ってみようと思ったのです。
 そこは四条烏丸からほんの4,5分のところなのですが、静かで、こういうところが京都の不思議さだと思うのですが、雑踏から遠く離れたような感じがして妙に落ち着けます。入り口が少し奥まっているのでわかり難いのですが、慣れると常連気分になれそうです。で、扉を押して入ると、いきなり件のシェフが名刺を持って待ち構えていました。聞けば、三日くらい前から緊張していたとのこと。そんなにオレ、大物じゃないんだけど。
 シェフは西居直映さんという上背のある若者で、好青年の印象。とりあえず名刺交換して食事はスタートしました。小さなお店だけど清潔感があふれていて、ひざに乗せるブランケットが用意してあるあたりは気配りが感じられます。レストランは1枚扉というところが多くて、冬は隙間風で足元が冷えます。だから僕の店は改装するとき2枚扉にして風除室を設けたのですが、そういうことにまで気くばりができるオーナーシェフというのは意外と少ないものです。それを低予算!でクリアしているあたり、たいしたもんだと思いました。
 ホールのスタッフは女性が一人、厨房はシェフ一人。だから、ホールが無人になることがあって、少々歯がゆい思いをすることもあるのですが、これは今後の課題ということで、でも、料理は素晴らしい。さすがに鬼の上島に鍛えられただけのことはあります。ひとりでこんな手のこんだことようやるなあ、というのが素直な気持ち。人手不足のため、16年目にして初めて自分の店のカトラリーを洗ったワタシにはできません。このお店のコースのお値段を考えると尚更!メインのお料理を食べ終えるまで感心の連続でした。で、そのメインのお皿を下げにきた女性スタッフがその時僕にこう言ったのです。「今、手が離せないのですが、うちのシェフがどうしても知りたいそうなので、私がシェフの代理で伺います。ミチノシェフ、何故髪を切られたのですか?」
 おいしい料理を食べて気分がよくなって弛緩しているのに、その質問はハード過ぎる、と思った僕はこう答えました。「そのうち教えてあげます。」。

 で、そのままになってるので、今、お答えします。
 まず、切る前の長髪の話から。
 髪を伸ばそう、と思いたったのはフランスにいたときです。もう20年くらい前。当時、フランスの自転車競技の選手でフィニョンという人がいました。彼が長髪を後ろで束ね、片方の耳にピアスをしてた。これがかっこよかった。群を抜く、そんな印象でした。日本に帰ったら、とりあえず髪を伸ばそうと思っていました。だから帰国後、アメリカ村のシェ・ワダ在職中にチョンマゲは完成。ついでに、お客さんの女医さんにシャンパン奢って、耳にピアスを装着してもらいました。無謀ですね、よっぱらいに耳に穴を開けてもらうなんて。でも、それも今はいい思い出です。
 当時のアメリカ村はとても楽しいところでした。どんなに奇抜な格好していても受け入れられた。でも、通勤の地下鉄車中では目立ったようで、じろじろ見られて閉口しました。
 それから十数年、僕はずっと長髪のチョンマゲでピアス。同業者に陰口たたく人もいたようですが、お構いなし。自分は自分なのだから。それが、ホテル勤めの長かった西居シェフにはカッコよく映ったのでしょうか。
 その髪を切ったのは去年の4月か5月か。店名も改め、再スタートを切ってすぐのことです。
 本当はイヤでした。でも、自分で作った自分のイメージを払拭したかった。大御所扱いなんてされたくなかった。今、最前線で活躍する若いシェフたちに、もう一度ライバル視されたかった。でも正直なところ、年齢的にピークは過ぎています。だから自分を鼓舞するためにトレードマーク切っちゃいますか、という訳で。
 それほどの固い決意で切ったのですが、後悔した一瞬があります。それはマダムにこう言われたとき。「あなた、けっこう絶壁だね。」。
 一時、日本のフランス料理はもう終わった、と言われました。イタリア料理でなければ客は集まらない、と。僕達も、若い人たちがどんどんフランス料理からイタリア料理に転向していくのを止めることができませんでした。でも、それでも頑張ってきた若者達が、再びフランス料理に衆目を集めてくれています。うれしい限りです。そういう時、目上の人間達が、過去の実績だけでふんぞり返っていてはいけないと思います。けっして押さえつけるような言動を取ってはいけない。むしろ、彼らに学ぶところは学ぼうと。で、そのうえで今度は、空気抵抗の少ない坊主頭で群を抜いてやろうと思っているのです。これが答えです。
 だから、こじんまりまとまっていると、オヤジたちにおいしいところ持っていかれるよ。西居君、それにラニオンの宮野君、油断は禁物です。でも、皆さん、彼らのお店は本当に素敵です。是非、足を運んでやってください。

レザール・サンテ!  オーナーシェフ 道野 正
 
ラ・プレーヌ・リュヌ
京都市下京区綾小路堺町西入る綾材木町199-2
℡ 075-344-1566

レストラン・ラニオン
京都市左京区川端丸太町東入るキャピタルヴィラ丸田町 1F
℡ 075-761-1540
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by chefmessage | 2007-02-10 03:20