ミチノ・ル・トゥールビヨンシェフ道野 正のオフィシャルサイト


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4周年のフェアについて

 19年、ずっと続けてきた豊中の店を閉めて、大阪市内の福島区に移り4年がたちました。1年たつごとに周年のフェアを催してきたのですが、これはいつも、自分自身の目標設定になってきました。いわば、ハードルを引き上げる役目を担ってきたのです。

 移転してきたばかりの頃は、自分のモチベーションが最も下がっていて、正直、途方にくれている、という状態でした。どこへ向かえばいいのか全くわからなかった。
 23年前、デビューしてすぐに、思いもかけなかったほどの高評価を与えられ、無我夢中で走りだしたのですが、なにしろ浮き沈みの激しい業界です。いつまでも人気者というわけにはいきません。やがて凋落の憂き目にあうのですが、なんとか返り咲こうと、それのみを考える日々でした。一曲目が大当たり、でもその後は鳴かず飛ばずの歌手の気持ち、に似ているでしょうか。
 もともと努力不足で、実力もさほどなかったのだと思い知らされた気分で、もはや身の置き所はどこにもないのではないか、とまで思いつめました。これは辛かったな。でも、幸いなことに移転で再スタートをきるチャンスが訪れたのですが、いざ走りだそうとしても、どちらに向かえばいいのかわからない。だから、話題になっているレストランに毎週のように食べ歩き。自店に戻っては試行錯誤を繰り返し、やっぱりこの方向しかオレの道はないな、と納得したのが移転後1年目でした。そして1周年のフェア。
 考えぬいたコースメニューでした。梯子を1段登った感じです。それから1年間は、そのレベルを維持して、さらに2年目3年目へと。そして、今年は4周年。

 正直なところ、ぼくの肉体は加速度的に衰えてきています。年齢的には、とっくにピークはすぎているのだから。それにともなって、気力も。でも、ぼくはまだハードルを上げようとしています。これはいったい何なのか。

 ぼくの主治医のS先生が先日、こんなことを仰っていました。「自分にはやり残したことがある、そう思っている人間はなかなか死にません。」。多分、それなのでしょう。ご存知のようにぼくには3人の子供がいて、高校2年生、中学3年生、中学1年生。そう、親としてはこれからが正念場なのです。ぼくには果たさねばならない責任が残っている。でも、彼らのために働くわけではありません。結果的にはそうであっても、ぼくは彼らがいるから前に進めると考えています。そうして、不屈の料理人として最後まで突っ走ってやる。
 料理の世界にあがりはありません。頂上に立っている、そう思っている人間は遅かれ早かれ転げ落ちます。いつも途上なのです。それなら、一歩でも進むのが本来の姿でしょう。たとえ力尽きて倒れても、目の前に草でも生えていようものなら、それを握り締めて、最後の力を振り絞って、倒れた体を押し出す、それが本望なのではないでしょうか。
 だから、今回の4周年の料理も、ハードルは高い。今までで、一番高い。
 どうですか、もうすぐ還暦を迎える男の旬の料理、ちょっと食べてみたいと思いませんか?9月18日からスタートです。
 
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by chefmessage | 2013-08-31 20:05