こころの栄養
2001年 06月 01日
愛する子供たちに よそのおじさん扱いされないだろうかと、そんな心配までしながら、それでも頑張れるのは、外の世界へ出ていくことで、今までと違った人間関係がひろがって、それがとても新鮮だからでしょうか。
例えば5月5日の「みかさつかさ」でご一緒した西村知美さん。天然ボケでけっこう注目されているようですが、本当にあのまんまです。プロデュ-サ-もディレクタ-も全員同じ意見だから間違いないでしょう。そして、全員がこういうのです。「ウラオモテがなくて、すごくいい子だ。」と。ワタシもそう思います。番組では、サ-モンサラダのクレ-プ包み、というお料理で、「子供の日のチマキをイメ-ジしてください」という設定にしたのですが、お料理を出した途端(本番中!)いきなり両手で持ってパクパク食べだしました。そして、目をクリクリさせて「おっいしぃ-」。カメラがとまるたびにまた食べている。そして、収録が終わったときには、結局最後まできれいに食べてしまっていました。その時、ワタシはセットの下手に引っ込んでいたのですが、彼女、ワタシの方に向かって、両手を合わせて、美味しかった・ごちそうさまと何度も何度も頭を下げるのです。本心からよろこんでますという仕草で、それが伝わってきて、ああ、この仕事やっててよかったなあと、こちらまでうれしくなり、その夜はぐっすり眠れ、西村知美さんにいっぱいお賽銭を投げてもらっている夢まで見ました。
テレビに出ていて逆につらいのは、カメラ回っているときは「おいしい-」とか言ってるけど、 止まった途端 苦労して作ったお料理もう食べなくなる人が結構いることです。お口に合わなかったかもしれないし、お腹がいっぱいなのかもしれないし、ダイエットしているかもしれないけれど、お料理が泣いているような気がして。だから、西村知美さんは新鮮でした。
そしてもうひとり、そういううれしさで思い出す人は、財津一郎さんでしょうか。
その時は冬だったので、テ-マは松葉ガニでした。まず、大判のガラス皿一面に松葉ガニのカルパッチオ。これはカメラ映えするよう、量も多めだったのですが、それを財津さんが一口食べて、いきなり席を立って、タケモトピアノ(?)のノリで踊り出した。その後ト-クがあってカメラが止まった後、財津さんもう一度食べだして、結局、全部たいらげた。二品目は、カニのリゾット、これも結構量が多かったのにドンドン食べてる。そこで心配になって声をかけました。「財津さん、無理なら残していただいていいですよ。」すると彼がワタシの方を向いてこういいました。「いやぁ、昔から女房には苦労かけててねえ、今ここにいたら食べさせてやりたいんだけど東京にいるから、かわりにぼくが全部食べてあげてるの。」そして食べ終わって、席を立ち、顔をぐっとワタシの顔に近づけて「料理って奥が深いねぇ、ありがとう。」この会話やらせじゃないんですよ。カメラ回ってないんだから。
本当にいい人なんだなぁ、と思ってしまうじゃないですか。そして次にまたチャンスがあったらもっといい料理出してあげたい、と。
その昔、レストランは栄養をつけに行くところでした。けれども今は、こころの栄養をつけるためにレストランへ行く時代だと思います。そのために、我々は努力をしているのです。そして、お客さんの素直な喜びがこちらに伝わってきたら、これはもう銭カネの問題じゃない、もっといい仕事をしなければ、ということになるのです。
そんな、料理を出す側と食べる側との、素直な心のやりとりは、お互いの人生の栄養になると思うのですが、いかがでしょうか。
さて、テレビの話題ついでにもうひとつ。「みかさつかさ」に出している料理のレシピがホ-ムペ-ジに出ています。興味のある方は「みかさつかさ」のサイトを見て下さい。