日本のピエ-ル・ガニエ-ル
2004年 01月 21日
室、と言ったり、僕の事、料理界のアクロバット、なんて書いていたので、気にせず、聞き流していたのですが、本家の料理に初めて接して、びっくり、というより思い知らされました。本物はちがう、と。まあ、山本氏の言葉を真に受けて、一緒にする方がどうかしてるんですが。
とにかく、最初のアミュ-ズから最後のデザ-トの一品に至るまで全部普通じゃない。はっきり言います、全部変!僕が言うのだから間違いない。で、これが全部おいしいから、すごい。もう最後のあたり意識朦朧、僕の食べているこれは何?という感じ。
だいたい普通なら、コ-スのどこかで正気に戻るもんなんです。食べる方も作るほうも。そうしないと疲れるから。料理人の立場でいいますと、どこかで必ず手を抜きます。全編緊張の連続だと、心も体もショ-トしてしまう。なのに、ピエ-ル君、やっちゃうんだなあ。 正直、自分の料理のヒントにしよう、というものはありませんでした。というより、するべきではない、と思いました。その人の感覚はそのひとだけのものであって、それを真似るなんておこがましいし失礼です。頭を垂れて全て受け入れるか、避けて通るしかない。それよりも僕が思い知らされたのは、ピエ-ル・ガニエ-ルという人の意志の強さと、努力です。パリと大阪ジャポン豊中では、環境はあまりに違うけれど、自分の意志を徹頭徹尾貫いて納得させる力強さは、環境の問題を超えて、努力だと思います。そう、才能というのは努力と同義語なんです。そして、その努力を成し遂げさせるのは、人間性、たとえば誠実さ、みたいな。天才、なんていう手垢の付いたキャッチコピ-は、この人には似合わない。
すみません。とてもじゃないが、日本の云々は返上させていただきます。ワタクシ、彼のような人格者ではありません。その日、同席していた横山シェフの愛嬢はその日お誕生日だったのですが、それを知ったピエ-ル君、彼女の頭にキッスをして、満面の笑顔でおめでとうと言いました。素晴らしい!自分は、人を幸せにするため料理人になったんだ、そして、そのために最高の仕事をするんだ、僕は、彼のそんな言葉を聞いたように思います。だから、その日は、自分に対する反省で朝まで寝られませんでした。
でも、反省するだけで形にしないと、またまた努力不足の誹りからは逃れられない。そこで、手始めに、ランチのオ-ドヴルとデザ-トを全面改良することにしました。詳細は別面で。皆さん、今年のミチノは本気です。
それにしても、モンテラ-ト横山シェフの涙腺は緩い。愛嬢がケ-キのろうそく吹き消して、みんなから拍手を貰ったとき、ナフキンで目頭おさえてました。なんか、ここにも誠実な人がいるなぁ、という感じ。ちなみに、お嬢さんの愛ちゃんは、まだ9才です。