大助さん と 花子さん
2004年 04月 05日

第二阪奈道路の、壱分という出口を左折して、NHKのディレクタ-が迎えに来ているはずのコンビニの駐車場に到着すると思っていたよりも寒く、ここよりもっと山奥となると、コックコ-ト一枚でお仕事するのは辛いなあ、と思ったのでした。いよいよ生駒の山腹にある宮川大助・花子邸でのテレビの本収録です。「食彩浪漫」という番組で、以前、まだ「男の食彩」という名前であった時、一度出させていただいたのですが、今回は構成が変わってオ-ルロケということで、車に食材・道具一式乗せて、助手のタッキ-とともに朝7時に店を出発しました。
先導の車に続いて、急坂の一本道を延々と登って行きます。冬は凍結して、四駆じゃないと滑って無理だろうな、帰りは無事下まで戻れるかな、と、心配は、むしろ道路状況でした。20分ほど行って、いい加減うんざりした頃やっと到着。切り立った崖の上にある大きなログハウス、そこがお二人のお家です。早速荷物を下ろして見回すと、テラスの下には一面の平野、庭で水撒いてたおじさんに、いい景色ですねえ、と声をかけたら、きれいですやろ、と答えてくれたその人が大助さんでした。いきなり世間話。で、お家のなかに案内してもらうと、テレビのクル-がいっぱいいて、忙しそう。そんな中で井戸端会議といった風情の女性二人、それが花子さんとNHKチ-フアナウンサ-上田早苗さん。こっち来てコ-ヒ-飲み、と誘われて、いきなり旧知であるかのようにお喋り。緊張感、まるでナシ。実はこれ企業秘密なんですが、わたくし、信じ難いでしょうが、人見知りするんです。だから、とりあえずク-ルにいってしまうんで、愛想悪いという第一印象もたれてしまうんですが、この日はそんな構えの必要まるでナシ。出演者4人、最初からなごんでしまいました。収録終わって上田アナに、おれたち全然緊張しなかったね、と言ったら、彼女も、こんな楽しいロケ初めて、と言い、これが大助・花子のすごさかなあ、という結論に達したのですが、あの二人、普通に喋っていても面白くて、本番では、それにちょっとタ-ボかけたくらいの力の入れ方で、それで充分番組になる。自然体なんだけど、ここ一番はきっちり抑えられている。そのうえ、周囲に気配り欠かさず、サ-ビス精神がいやみでない。うちの助手の名前もちゃんと覚えていて、タッキ-、と呼びかけてくれる。だから、みんなリラックスして働いて、気分がいい。すごいなあ、って。
売れない頃、大助さんはキャバレ-の調理場でバイトしていたそうです。花子さんは若い頃、よく補導されるヤンチャな娘だったみたいです。過激さで売り出し、でも、人気絶頂のとき花子さん大病を患い、それを機に、自然に囲まれた、広い畑もあるこのお家に引っ越してきたそうです。本当は普通の奥さんになるはずやったんやけど、と話す花子さん、でも全然辛そうじゃなかった。波あり谷あり、でも悪くないね、とその横顔が語っているようでした。
料理は芸術だ、と言われます。でも、僕自身は何度も繰り返すけど、そうは思っていません。漫才と同じ芸だと考えています。演じる場所、お客さんの年齢層などを見極めてネタを変え、とにかくうけること。笑わせること。元気づけること。そのために常に前向きに努力を怠らないこと。そして、できれば無理をせず自然体であること。その方が、相手をリラックスさせれるし、自分も楽で、その結果長続きする。
僕は今回の収録で、大助・花子さんからそれらを教えられたような気がします。
長い間同じ仕事やってると、作風が変わったね、といわれることがあります。自分でもそう思う事があるし、意図してやる時もあります。けれど、目標さえしっかりしていれば、正常進化していけると信じています。でも、皆さんの望まれる方向じゃないときは教えてくださいね。
収録が終わって帰り際に、花子さんが、うちの野菜定期的に取りにきてお店で使ってあげて、と言ってました。だから、宮川大助・花子農園の野菜を使った料理がそのうち登場するかもしれません。でも、そのためには四駆の車が必要だから、とりあえずカタログ集めようかな。