たいへんお世話になりました。
2006年 03月 18日
16年間歩み続けた、レストラン・ミチノは、その役割を終えたという認識のもとに閉店し、今回全面的に装いを新たにし、店名を「レザール・サンテ!」と変更して船出いたしました。
店名の由来は「芸術」「健康」を一つにしたものです。
元来、芸術は健康とは言い切れない影の部分を併せ持つ複雑なものではありますが、時代の推移をとらえるならば、逆に提案としては面白いのではないかと考えました。16年間のシェフの生活でつちかわれた芸術的センスを駆使することで、ともすれば明るすぎる、あるいは実直すぎるイメージを洗練させ、ユーモアをも付加することができるのではないかと思ったのです。ただそのためには、基礎としての骨格がしっかりしていなければなりません。
そこでまず、素材の仕入れから見直しました。一番難しいのは野菜でした。ご存知のようにオーガニック、無農薬、ヴイオディナミという言葉が随所にちりばめられ、玉石混合で収集がつかなくなっている分野です。ありえないようなことを平気で喧伝している業者や飲食店も多々見られますし、極端ではないかと思われるグループもあちらこちらにできています。消費者も右往左往してのが現状ではないでしょうか。そこで、誠実な ひと探し をポイントにしました。
その人となりに共感できる人間の扱うものなら、信憑性もあるのではないかと考えたからです。そして、ナチュラルビズの荒井さんとであったのです。
彼の会社は小さいけれど、例えばタマネギならば現在、国内のどの産地の誰のものが良いのかということをトレースしてその品物を取り寄せてくれます。そのことで素性の良いものを安定して得ることが出来ます。これは我々にとっては大きな利点です。そのうえ気に入ったのは無農薬でなければダメ、というのではなく、例えばその方向を目指しているけれど、今はまだ過渡期、という人達の作物も扱っていることです。
無農薬、有機栽培、にまで持ち込むのは土壌の改良が必要です。それには少なくとも3年は必要で、その期間収入は減りますし、へたをすればゼロになることもあるのです。だから、多くの人達は従来通りの農業を続け、既存の枠組みを崩そうとせず利権を守ろうとします。
でも過渡期にある人たちの節農薬、減農薬のものも従来のものよりは改良が進んでいるし、それを応援することが出来るのなら、それは未来の夢を買うことでもあると思うのです。たから、レザール・サンテ!の野菜はほとんどナチュラルビズから仕入れています。
その野菜たちを中心にすることで、料理もすべて一新しました。とても健康的な、でも芸術的な味わいとヴィジュアルの数々です。そして、それだけではなく、健康という広範囲な概念から具体性のあるものを一例として選びランチに美肌コースというものを設けました。ベテランエステティシャンとスポーツ管理栄養士の助言を受け入れて、メインの料理を考えています。
1回食べてすぐ効果があらわれることはありませんが、食べるという日常の行為に正当性と方向性があれば、心が豊かになれると思ったのです。
同じアプローチで、子供たちのためにランチとディナーを用意しました。
一皿になにもかも盛るお手軽で安価な代物ではなく、ちゃんとコース仕立てにしてあります。私とマダムなりに食育を考えたつもりです。
だから、新しいワインリストにはVin de Natureがいっぱい並んでいます。畏友の合田康子さん「㈱ラシーヌ」に協力してもらいました。
こうして出帆した船です。方向は見えているけれど目的地に到達できる日はわかりません。でも大切なことはあきらめないことだとおもいます。ぜひ一度お越しください。そして応援してください。
よろしくお願いします。
レザール・サンテ! オーナーシェフ 道野 正