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ミチノ・ル・トゥールビヨンシェフ道野 正のオフィシャルサイト


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ミチノ・ル・トゥールビヨン 復活!

 レザール・サンテは7月10日で閉店しました。レストラン・ミチノから数えて19年と2ケ月、やってきた本人はそれほど意識していなかったのですが、随分長い時間だったようです。そもそもフランス料理店というのは、お誕生日だとか記念日だとか、何かのお祝いの日にご利用いただくことが多いので、お客様の人生の節目というか歩みと重なって時を経ています。だから閉店となるとたくさんのお客様が惜しんで来店してくださり、さまざまな思い出話を語ってくださいました。それをお聞きして、ああ、オレは長い間ここで頑張ってきたんだと悟ったわけです。
 やっぱり素晴らしい仕事だと思います。僕の店で初めてデートをし、お付き合いが始まり、プロポーズも僕の店で。そうやってゴールインしたカップルも何組かおられます。高校に入学したお祝いで初めてぼくの料理を食べたお嬢さんは、もうしっかり結婚して子供も出来て。毎年クリスマスディナーに来られては、その時に撮った写真で年賀状を作る御夫婦もおられました。素敵なお話が満載の幕切れでした。
 でも、つらいこともありました。

 随分前に、このページで書かせていただいたSさんの奥様のひとこと。
 Sさんは、オープン以来必ずご家族と御一緒に毎月一度来られていたのですが、しばらくそれが途絶えたことがありました。なにかあったのかと心配していたら、久しぶりに、それも大人数でご予約いただいたので一安心。でも当日、ご主人の姿が見当たりません。「あれ、ご主人は今日はお見えにならないのですか。」とお聞きしたら、「実は先日、病気で亡くなりました。」とのこと。「でも悲しまずに、道野さんのところにみんなで行って、おいしいものを食べなさい、そう言い残したので今日はみんなで来たんです。」。
 閉店の日に、東京で働く息子さんはわざわざ会社を休んで、お母様とご一緒に来て下さいました。握手を交わす僕と息子さんの横で、Sさんの奥様はこう仰いました。「道野さん、私は置いていかれるようで寂しいです。」。
 どうこたえていいのかわかりませんでした。僕は間違った選択をしたのか、その時本当にそう思いました。
 できれば豊中のこの店をずっと続けたかった。閉店の日が近くなるにつれ毎晩、重い溜息とともに灯りを消しました。ぼく自身の人生の最も大切な時間もここで過ごしたのです。悔しくないはずがない。でも、もうやっていけない。
 中之島に移転する(現在、既に移転開業)ヴァリエの高井シェフから、移転後の福島の店を引き受けて欲しいと打診を受けて、なんとか目途がたったもののそれまで本体が持ちそうになかったので、僕とマダム、スタッフ全員は必至の延命作戦を繰り広げました。毎朝50個のお弁当作りと配達、阪急キッチンエールへの食品の卸し、これらを本業をやりながらこなしました。休みなし、休憩なしの半年たらず。そして、なんとかここまで来たのです。
 僕は、だれも置いてなんか行きません。これからも僕の料理を、レストランを続けていきたいから、僕は新天地に行くのです。みなさんの思い出話の続編がいままでよりもっともっと輝いて、一生物となるように。

 8月10日、オープンです。場所は大阪市福島区福島6-9-11 神林堂ビル1F、店名はミチノ・ル・トゥールビヨンです。これは前に戻るのではなくて、再び旋風を巻き起こしたいという気持ちからです。レザール・サンテは経営的には大失敗でしたが、その精神は引き継ぎ、より発展した僕の料理をご披露します。
 だから、少し遠くなりますが、Sさんの奥様、どうかいらしてください。そして、このメッセージをいつも読んでくださっている皆さん、是非お越しください。
 この頃、僕は心の中でいつもこう思っています。
 「天才は忘れたころに復活するのぢゃ。」。
  かかってきなさい。
 
お知らせ

 どなたか、ぼくの豊中のお店を引き継いでやっていただけませんか。改装して3年足らず。とてもエレガントなお店だと思います。好条件出します。ご興味ある方、ミチノまでご連絡ください。

レザール・サンテ!  オーナーシェフ 道野 正
by chefmessage | 2009-07-18 04:02