「あほやなあ」と呟くとき。
2010年 05月 30日
でも、そんなぼくがもう20年も所属して、あろうことか理事さんにまでなっている団体が一つだけあります。それは千里中央にある環境衛生同業組合の千里ニュータウン支部です。開業資金借り入れの窓口になっていただいたのが最初のご縁なのですが、それ以来何かとお声をかけていただいて、可愛がっていただいて、名ばかりで何もできないのに理事にまでしていただいて今日に至っています。飲食店のオーナーばかりの組合なのですが、中華料理・しゃぶしゃぶ・和食などさまざまなジャンルの方がおられるので面白いし勉強にもなります。
そのニュータウン支部の年に一度の総会が、5月19日に千里阪急ホテルで開催されることになったのですが、懇親会での食事の時に毎年行うアトラクションを何にするかがあるときの理事会の議題になりました。和太鼓とかオペラとか、その年ごとに理事会で選考するのですが、今年は組合員でもある歌手の永田カツ子さんにお願いしようということで決定。
そして当日。予算案などのお堅い議題が並ぶ総会が無事終わり、懇親会になってアトラクション。派手な作務衣にちゃんちゃんこ、赤い鼻緒の草履というおなじみの衣装で永田カツ子さん登場。
なんどか永田さんの歌は耳にしているし、組合の旅行でカラオケご一緒したこともあるので、ぼくにはおなじみの歌い手さんといった印象です。でも、久しぶりに聞いたこのときの歌は違っていました。すごく軽やかで、抑揚が豊かで、なにより悲しい歌には悲しみが、楽しい歌には笑いがあってそれがしっかりと伝わってくる。聞き惚れてしまいました。そして、失礼ながら、一段とお上手になられた、と思いました。
そう思ったとき、ぼくは、とても深い感動に包まれました。
多分、ぼくよりもお年は上のはずです。でも、この人は今までで最高の歌をうたっている。
やれば出来るんや。もっともっと上手になれるんや。それが実感できて、すごくうれしかった。
数日後、感謝の気持ちを伝えたくて永田さんにメールを打ちました。すると返信があって、そこにはこう書かれてありました。
「だんだん出なくなる声に気づき 声に頼らず 下手に歌ってもいいから楽しもうと思ったらとても楽になって・・・。」残念ながら、ぼくはまだそこまでの境地には至っていません。むしろ体力・気力が尽きる前に望む場所にたどり着きたい、そんな思いで毎日必死です。
そう言えば先日、久しぶりに御影ジュエンヌに食事に伺ったのですが、初孫が生まれてめでたくおじいちゃんになった大川シェフがこんなことを言ってました。「できるだけ孫の顔、見ないようにしてます。」「なんで?」「闘争心が薄れるから。」。おいおい、君はまだ戦い続けてるんか。こないだ、ジャン・ムーランとの戦いが終わったと言うてたやないか。
でも、気持ちは大いにわかります。ぼく自身、ITで武装したクールな若手シェフ軍団に対して、いい年して無謀にも、義理人情で挑んでいるのですから。勝ち目があろうがなかろうが、そうしないと収まらない自分があるから。
永田さんの新曲のエンディングの台詞ではありませんが、「あほやなあ。」と思います。なにをそこまで青筋立てて、という感じです。でも、先述の永田さんのメールには、こうありました。
「神様から貰ったこの喉が枯れ果てるまで歌いたいと思っています」。 ああ、これやな。そのことに理由はないけれど、永田さんは歌い続け、ぼくや大川シェフは料理を作り続けます。そして自分の人生が無駄でないことを証明したいとこころから願っています。そうすることで、誰かを元気にしたり勇気づけることができたなら、それ以上うれしいことはないから。
正直言って、苦しい毎日です。辛くて音を上げそうになることもあります。でも、永田さんの歌で勇気いただいたから、まだまだがんばろうと思います。そしてもっともっと上手になってやろうと思います。
だからいつか永田さん、佐川満男さんとのデュエットでヒットとばした名曲「かんにんしてや」を一緒に歌わせてください、なんて、オレやっぱり目立ちたがり屋なだけかな。「あほやなあ」。