夢見る悪人
2011年 08月 25日
ぼくは完全に夜型なので、家族が寝てしまった深夜にDVD観たり音楽聴いたりする時間がないと眠れません。いくら疲れていても、というか疲れているときほどそのような時間が必要みたいで、だから一週間借りれるDVDは必需品です。
でも、もう寝ようと踏ん切りがつきやすいものでないと朝が辛いので、恋愛ものと青春ものは基本的には好みではありません。だから「悪人」を借りたのはたまたまで、面白くなかったらすぐ寝ようと思っていました。ところが、これが結構、ささってくる。原作は、吉田修一の小説で、彼の本は何冊か読んでいたのですが、だいたい原作よりもよくできた映画にお目にかかったことがないので、これは以外でした。まあ、多分に深津絵里の名演技があるからでしょうが。
その映画のなかで、殺された女性の父親(柄本明、本当はあまり好きではありません。)がこんなことをつぶやいていました。「その人が喜ぶことをしてあげたら自分も幸せな気分になれる、そんな人が人間には必要なんだ。」。劇中の科白なのでうろ覚えですが、だいたいそういう内容だったと思います。それを聞いて、ぼくは家族のことを思いました。そして辛くなりました。幸い、ぼくにはそのような対象となる人たちがいるけれど、でも、ぼくは彼らの望むことを何一つしてあげていないのではないか。ほかの仕事をしていたら、もっと経済的にも時間的にも余裕があったのではないか。結局、ぼくは自分のわがままで、彼らに我慢を強いているのではないか。
やりたい仕事だけやって、自分だけがいい気になってはいないか。
夜中に重いため息が一つ。オレも悪人か?
せめて、借り物ではない自分たち家族の家をもちたいと思います。それが夢といえば夢でしょうか。もちろん、これまで家を買うということが出来なかったわけではありません。でも、その必要がありませんでした。住むところくらいはついて回る、そんな環境だったから。でもある日、それが激変して。
かつてはマイホームパパを小馬鹿にしてアウトローを気取っていたわたくしですが、深く反省しております。こうなれば意地でも家一軒建ててやる。それも、正攻法で。
とにかく全身全霊で、素晴らしい料理を作り続けてやろうと思います。頑固にやりたい仕事だけやって、それをこつこつ積み重ねて念願のマイホームだ、と言っても何年かかるか、何年住めるかわかりませんが。でも、家族が「ただいま」と帰ってきて、ほっとできる場所くらい人並みに作ってあげたい。たとえそれくらいしか出来ないとしても、今のぼくにはそれが精一杯で、それをわがまま押し通してやり遂げることができたなら、まあ、この人生もわるくはないかな、と思うのであります。
悪人も とどのつまりは 家一軒
で結局、ぼくは最後まで「悪人」観てしまって、すっかり寝不足になってしまいました。でも深津絵里の演技、素晴らしいですよ。よろしければ皆さんも是非観てください。