地図のない旅 3
2014年 02月 04日
そして、その日がやってきました。果たしてその女性とは・・・前にブログに書いたこともある、大阪は新町のフランス料理店「バレンヌ」のオーナーシェフ、木村圭子さんでした。お腹はまん丸。聞くと、もうすぐ生まれる、とのこと。
そういえば、彼女から葉書が来ていたのを思いだしました。1月より3月まで、出産のため休業、4月より営業再開。彼女、いつの間に結婚したんやろ、それよりも、その勇気に驚きました。素直に、エライなあ、と。
彼女の料理は、今風ではありません。でも、着実なフランス料理です。そして何より、フランス料理が大好き、という雰囲気が横溢していて。それが、山口くんと共通している。
その彼女、出産にあたっては随分反対されたそうです。子供を産むなら店は閉めるべきだ、とか、どっちつかずで料理がおろそかになる、とか、子供産んで育てる片手間に店なんかするな、とか、あげくのはてに、子供がかわいそうだ、とか。
そういうことを言うのは、主に同業者だったというのを聞いて、ぼくは非常に腹立たしく思いました。同業者なら、むしろこぞって応援すべきではないのか、と。
近頃はどこのレストランでも女性の従業員が多い。調理師学校でも、女性の比率は、かなり高いはずです。うちの店でもスーシェフは女性です。5年勤めてくれていて、この頃は、随分頼りになる存在になっています。結婚しても、子供うまれても、うちの店は辞めんといてね、とお願いしているくらい。
でも、実際は、多くの女性の調理師が、あるいはサーヴィスやソムリエールの仕事をしている人たちが結婚を期に辞めていきます。ぼくはそれが残念でならない。確かに時間は長いし、肉体的には辛い仕事かもしれません。でも、才能ある人たちが去っていくのを見送るのは悲しいもんです。
だから、木村さんの勇気にぼくは感動すら覚えたのです。
「店を子供みたいに大事にして育ててきたら、ほんとに子供が出来て、でも、どっち取るって言われても、どっちも捨てられないじゃないですか。」。その通りだとぼくは思いました。彼女がお手本を示したら、日本における女性シェフが続々誕生ということになるかもしれない。ぼくはそれは本当に素晴らしいことだと思います。うちのマダムに聞くと、出産後の体調は人それぞれだから、あんまり頑張れなんてプレッシャーかけてはいけない、ということでしたが、それならそれで、方法を探せばいい。ぼくにできることなら、精一杯力になりたい。
ここにも地図を持たない旅人がいる。ぼくは、彼女と知り合いであることを誇りに思いました。
事前の電話で、妊娠中なので生ものは避けてください、と山口くんに言われていました。こちらもそのつもりで、料理には気配りをしました。でも、ヴォリュームは変えませんでした。なぜなら、山口くんが大食いで、彼女が持て余したら、彼が食べるだろうと考えたから。料理はすべて山口サイズ(通常の1,5倍)で2人前。大丈夫かな、と途中で見にいったら、なんと妊婦さん、山口サイズを完食!
大丈夫やで、木村さん、そんだけ食べれたら。なぜか、おおいにほっとした夜でした。