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ミチノ・ル・トゥールビヨンシェフ道野 正のオフィシャルサイト


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料理教室

 去年の4月からレギュラー出演してきた『みかさつかさ』ですが、番組の内容変更にともなうメンバーチェンジで、僕の出番は3月いっぱいで終了となりました。
半分寂しく、半分はホッとしたというのが本音です。なにしろテレビの仕事というのは、一本録り終わったら、すぐ次の打ち合わせが始まるという切れ目のないもので、そのうえ僕の場合は、お店の定休日を収録日にあてていたので、この1年間、ほとんど休みなしという状態だったから、結構疲れていたのです。
だから、休めるのはうれしいんだけれど、生活のリズムができあがっていたので、寂しさというか、緊張感がうすれるのも実感としてあります。でも、しんどいながらも、楽しかったな。芸能人も以外と普通だな、と思ったり、やっぱり違うな、と思ったり。で、結論としては、どんなお仕事もたいへん、というありきたりなものなのですが、やっぱりどんな世界でも、成功の裏には努力があると思いました。
 かとうかずこさんは、どんなハードスケジュールなときでも、本番になると、いつもきれいでセンスよかったし、セインは、日本人以上に礼儀正しく律義だったし、石田アナは、いつも勉強熱心だったし。だから、離れがたい気がするのですが、そんなことは言っておられないミチノシェフなのだ。
 僕も頑張って、自分のお仕事に邁進しよう、というわけで、

4月から、料理教室 なるものを始めることにしました。

 というのも、今までワタクシの場合、地域の皆さんどころか、日本全国から愛されたいと思う欲深い人間だったので、どうすれば遠くからでもお客さんが来てくれるのか、ということばかり考えていたフシがあるのです。だから、お店の調度は超豪華で、料理も他では絶対マネできないものを作り続けてきました。その結果、東京・名古屋・岡山・広島、これは誇張ではなくて、北海道からも来てくれるお客さんがいるという、そんなお店になれたのですが、でも、地元のお客さんには却って敷居が高いと思われるようになってしまったのです。これって良くないよね。不自然だな。やっぱり、ご近所の人達にも愛されないとね。僕たち豊中市民なんだから。そこで、今年になって、気軽に利用していただけるよう、まずランチとディナーのコースにお値打ち感のあるものを設けました。特別な日ばかりでなく、お友達と誘いあって普段使いにも利用していただけるように。で、自分でも思うのですが、ランチ¥2,800,ディナー¥5,500、このふたつの新設コースはほんとにお得です。時々、これで利益って出てるのかな、と不安になるもんね。
 でも、オープンして12年目、僕たちとしては、もう一度原点に立ち返る気持ちなのです。
 レストランは人を幸せにする場所です。まず近くの人達から。気がつくのに随分時間がかかってしまいましたが、でも、その分経験も積みました。それを味わってほしい、とにかく一度足を運んでいただきたい、後悔させないから、それが今のレストラン・ミチノの目標です。アルコールがダメな人のお飲み物も用意しました。ワインも、持ち込み料さえ了解していただければ持ってきていただいてもオーケーになりました。いままでのミチノではありえなかったことを自分たちの手で変えようとしています。
ただ、変わらないことがひとつだけ。
それは、いつもシェフがすべての料理の仕上げをしていること。頑固ですが、好きなんですね、結局。で、4月からは、その好きな料理を公開しようかな、と。これは、ウチのマネージャーとマダムが、テレビの仕事がなくなって楽になった分、シェフに何かさせようと企んだ結果なのですが、地域の皆さんも喜んでくれるんじゃないかな、と本人も思ったので実行することにしました。調理場が手狭なので実習はしていただけないけれど、僕が実際につくるのを見てもらって、そのお料理を食べてもらい、そのうえ当店ソムリエのワイン講習つきで、1回¥5,000。けっこういいんじゃないでしょうか。是非、ご応募ください。
 また、3番街フェルタのお総菜も4月から新しいコンセプトで展開します。けっこう斬新なアイデアを計画中なので、お楽しみに。で、結局、相変わらず忙しいミチノシェフなのであった。
by chefmessage | 2002-02-10 22:39

今年も元気に!

 毎週テレビに出てるっていうのは、けっこう影響力があるもので、お問い合わせの電話が随分増えました。でも、残念なことに、コ-スのお値段を聞いて「やっぱりやめておきます」というお返事も増えました。
 うちのお店って、値段高いですか? 本人はあまりそう思ってはいなかったのです。とにかく、どこにも負けないお料理を、というコンセプトで突っ走ってきましたから。そんな話を、ある常連のお客様としていたら、その方がこうおっしゃいました。
 「自分たちは、来て食事をして、納得しているからぜんぜん高いとは思わない、むしろ、これじゃもうからんやろな、と思う。でも来たことのない人が電話で値段を聞いたら、こんな時代やから高い、と思うんとちがう?」 やっぱり、そうなんですかね。 でもそのお客様は続けてこう話されました。「せっかくの腕なんやから、もっと、たくさんのお客さんにふるうべきやで。それに、僕らの息子や娘が、親の財布をアテにせず、自前でこれるコ-スがあったら、僕らもうれしいね。」そうか、そういうことか、と妙に納得してしまったのです。親にも、子にも支持されるレストラン、うん、かっこいいな、と。
 それに、前から気になっていたことがあるのです。それは何かと言いますと、うちのお客さん、ほとんどが、わざわざ来られる方たちで、地域の方って意外と少ない。皆さん、うちのお店のことはご存じなんだけど、敷居が高い、とおっしゃる。それもこの際解決しようかなと。
 そこで、ついにやることにしました。
 価格破壊ってやつ。
 もちろん僕自身のですが。
  まず、ランチは¥2,800からです。オ-ドヴル3種類、メインは3種類からチョイス。

 次に、ディナ-。これは革命ですよ。ア・ラ・カルトの中から、オ-ドヴルとメインを選んで、¥5,500という新コ-スの設定。自分でも信じられません。なぜって、うちのお店、ア・ラ・カルトからオ-ドヴルとメインを選ぶディナ-は、¥12,000だったから。
もちろん、安けりゃいいんだろう、という気持ちでやるつもりはありません。力の入れ方は同じです。そういう人間なんですから。むしろ、僕の気持ちは、皆さんに愛されるレストランになろう、ということにあります。というか、その言葉自体、やっと気づいたというのが本音なのですから。大人になるのに、随分時間がかかりました。

  そのうえ、これはワインマニアの方に朗報です。今まで、断り続けてきたワインの持ち込みを解禁にします。ただし、持ち込み料は、1本につき¥2,000いただきます。それが高いのか安いのか、正直わからないのですが、なにしろこちらは1、700本の在庫を抱える身です。うちのを飲んで下さいというのがいつわりのない気持ちなのですが、あまりのリクエストの多さにお答えすることにしました。
  開店して12年目、はじめての試みを、今年はたくさんやろうとしています。たちどまらず、もっと前に進んでいこうとおもいます。皆さん、どうか力を貸して下さい。そして、みんなで、元気を分かち合いましょう。
by chefmessage | 2002-01-10 22:38

毒見

このごろ電話などでお問い合わせが多いのが、例のBSE(狂牛病-牛海綿状脳症)に、どう対処していますか、ということです。そのことについて今回は詳しくお答えします。

 まず食材については、肉類は現在、ヨ-ロッパ産のものは、ほとんど輸入がストップしています。
 かろうじてうちで使っているものとしては、鳩、ウズラ、フォアグラがフランス産です。これらには、BSEそのものが存在を確認されていません。

 その他の肉類で、使っている物としては、リ・ド・ヴォ、仔牛、仔羊、牛ロ-ス、黒豚、地鶏、がありますが、リ・ド・ヴォ、仔牛、仔羊、それからフォン・ド・ヴォに使う仔牛の骨は、すべてオ-ストラリア産のものを選んでいます。
 オ-ストラリアは、BSEとその原因となったと疑われているTSE(スクレイピ-、羊の伝染症海綿状脳症)の危険性が世界で最も低いと言われている国です。
というのは、オ-ストラリアは1966年以降オ-ストラリアと同じく、BSE・TSEの存在しないニュ-ジ-ランドの骨粉製品しか輸入しておらず、現在では法律によって、その骨粉すら使用してはいけない、すなわち反芻動物(はんすうどうぶつ)に肉・骨粉飼料を与えることを全面禁止している国であるからです。
 また、国として定期的かつ系統的に病害監視プログラムを実施し、屠殺現場には獣医師を配置させるということまでしています。ですから、少なくとも病害に関しては問題ないのですが、ただ私としては、おいしくなくては許せないので、まず、仔牛・仔羊はともに生後6ヶ月までのものとし、なおかつ母乳と牧草しか口にしていないものと限定して、いろいろなところからサンプルを取り寄せました。その結果、いちばん自分の舌にあったものを選んで使っています。
これは、リ・ド・ヴォも、フォン・ド・ヴォに使う仔牛の骨も同じです。
 まず、ミチノがお毒味してさしあげました。
 
 でもそれでも、どうしても、フォン・ド・ヴォが気になるという方は、おっしゃってください。
 じつは、そのうちフォン・ド・ヴォもくどいと言われる時代が来るのではないかと考えていたミチノは、フォン・ド・ヴォを全く使わない料理のレシピをしっかりもっているので、いくらでも対応できますから。
 
 さて、後は国内産のお肉たちですが、牛ロ-スは松阪のものを使っています。これは一般の飼育とは方法を異にしており、餌は完全に穀物と牧草です。肉・骨粉飼料があるのも知らなかったという人達がいるくらい、伝統的に植物飼料しか、与えていません。そのうえ、正肉なので問題はないと思います。
 つぎに、黒豚ですが、これは契約している飼育場がはっきりしている安全な無菌豚しか買っていません。使っているのはフィレのみです。また地鶏は日向産の赤鶏で、半ば放し飼い、餌は穀類のみです。
 そして最後にゼラチン。そんなに沢山使う物ではありませんが、心配な方もおられるでしょう。昔は、鯨の骨から作っていたのですが、現在うちで使っているのは豚の骨が原料です。これも問題は発生していません。BSE・TSEの疑惑の範疇外です。

 さあ、これでご理解いただけたでしょうか。私の仕事は人を幸せにすることです。安全で美味しい食材を厳選するのは当然です。ただ、現実としては、食べ物は二極化しつつあります。

 一つは経済的な効率を優先した食べ物です。いかに無駄をなくし、短期間で実利を得るか。そのために、オ-トメ-ションとマニュアルの徹底化が行われています。それが、運動できないような狭い場所に閉じこめられて、昼も夜もなく、自然のサイクルを無視した栄養価の高いエサを与え続けられ、短期間で食肉にされる鶏や牛たちです。 あるいは、土に触れたことのない野菜たちです。そして、機械的に食べ物として製品化され、マニュアル化したサ-ヴィスで売られていくのです。
 そこには、働く人達の疑問を挟む余裕はありません。むしろ、それらは排除されていきます。そうでないと、単価を思い切り下げたのに、逆に利益が出るなんてことが起こるはずがないのです。そして、そのような組織の主は、こう豪語します。「人間の味覚は、5~6才までに決まる。だからファミリ-で来てくれれば、その子供たちが親になっても子供たちを連れてきてくる。それが続く限り、ファ-ストフ-ドは不滅だ!」と。
 でも、その思想と方法に対する警鐘が、今回の出来事には含まれているのではないでしょうか。
 かたや、その反動として、昔ながらの手間ひまかけて、を見直し安全で美味しい物を作ろうという人達も多く輩出してきています。
 そして、ミチノはそれらを探し求め、大切に調理し、マニュアルに陥らないサ-ヴィスで提供しようとしています。

 先日、なくなった落語家の古今亭志ん朝さんは、「落語なんてものに生涯かけるからイキなんだよ」と語っていたそうです。
 実は私も、フランス料理なんて、と心のどこかで思っています。べつに、この日本にはなくったっていいもんだ、と。
 でも、それに一所懸命なのも、志ん朝さんに見習えばイキではないか、と。そして、そのイキの中に 伝えたい、本当に大切なものがこめられているように、祈りながら、

    皆さんが来て下さるのを、
    今日もミチノは待っているのです。

 そこで朗報!
ランチがすごくかわりました。
オ-ドヴルとメインが3種類ずつから選べて、その上 値段もお得に!
いつか行ってやる、と思っている人、まずランチにきてください。
by chefmessage | 2001-10-01 22:37

シェフの夏休み

 先日、ある方から、「テレビの仕事に熱心なあまり、お店の料理のレベルがさがるなんてことないでしょうね。」と質問されました。たしかに、そんなお店が多いのも実状で、だから、そう思っている方たくさんいるかもしれないので、この際お答えいたします。
 そんなことはありません。テレビの収録は2週間に1回、1回で2本分録ります。そして、その収録日は、うちの定休日である水曜日です。というか、水曜だったので引き受けたのです。だから、営業日には、あいかわらず店にいて、かならず料理作っています。
 「毎週、テレビに出ているのに、ちゃんとお店で仕事もしているシェフって、あまりいないですよね。」と、このあいだも同業者に感心されてしまいました。でも、それで当たり前だと思うのですが。ただ、正直言って、少し疲れます。それが、日常の業務に差し支えてないかと問われれば、なくはないでしょうね。だから、スタッフを強化したり、いろいろ策を練って対処していますが、やっぱり休むのが一番かな、ということで、今年の夏は4日間お休みをいただきました。
 毎年、ミチノの夏休みは、北海道で過ごすことになっています。というのも、うちでス-シェフだった河原という男が旭川で自分のお店をやっていて、彼も僕と同じく釣り好きなので、いっぱいポイントの情報なんか集めてくれていて、彼のところを拠点に、鱒をルア-で釣りに行く、というのが、毎年恒例の行事だからです。
 去年は、オホ-ツク海に向かって、胸まで水に入り、延々とルア-を投げ続けたのですが、ヒット2回、釣果はゼロと散々だったので、今年こそ、と意気込んで、電話で何度も意見交換。その合間に、お互いの店の近況を話し合う、ということをしていたのですが、ある時河原君が、「もう、店やめようかなと思う時があります。」と言うのです。何故かと問えば、やはりお客さんが少ない。だから、今以上に値段を落として、もっと食べてもらいやすい料理、例えばパスタとか、そんなメニュ-増やしたほうがいいんじゃないか、でも、自分としては、ある程度は納得のいく料理で勝負したい、でも経営は苦しくて。
 僕も、旭川の、いわゆる高級フランス料理店で働いたことがあります。もう13年も前のことですが、そのときも、「お宅はパンだけで、ライスがないからお腹いっぱいにならない。」という理由で来てくれない人が随分いて、面食らったものです。今では、もうそんなことないだろうけど、旭川という街も、地場産業の沈下で景気が悪く、年々、人口が減っていっているようなところなので、彼の店のような、どちらかというとマニアックで、ちょっと贅沢な感じのするレストランはしんどいだろうな、ということは想像がつきます。でも、だからといって弱音なんか吐くなよ、と、僕の立場としては言いたくなるじゃないですか。旭川で今の奥さんと出会って結婚して、子供ができて、自分のお店も持って、熱心なスタッフにも恵まれているんだから。プライドも大事だけど妥協も大事で、そのへんうまく折り合いつけて、もう少し頑張ってみろよ、と。
 でも、言葉だけじゃなぁ、オレも妥協できない人間で、彼もその辺よく知っているから、説得力ないよなぁ、と思ったのです。そこで、またお人好しが口をついて出てしまったんですね。「じゃあ、お前んとこの店の刺激になるよう、オレがフェアをやってやる。」
 今まで、この言葉だけは口にしたくなかったのです。夏の北海道、良き友と釣り三昧。なにより楽しみだったんだから。だから、一晩だけやぞ、他の日は釣りやぞ、と念を押して、メニュ-書いて、ルセットをfaxで送って、ワインを選び、食材の手配して。すると、しばらくして、河原君から電話が来ました。「反響がすごくて、一晩で二回転させないと入り切りません。それも、かなりお断りしてなんです。」。ミチノはきっぱり答えました。「二晩やったる。」
 結果は大盛況。自分でもたじろぐほど褒めちぎられ、雑誌と新聞の取材まで入って、やれ、このあと一席設けさせてくれ、とか、今年の冬にも来てくれ(冬の北海道には絶対行きたくない。)、とか、うれしい悲鳴だったのですが、さて、二晩のフェアを無事終えて、その後、不眠不休で車をぶっとばし、大雪山の麓は大雪ダムにて、夜明け前から釣りは開始されたのです。でも、台風の接近による雨で、午前中しか竿を出せず、結果は、今年も惨敗であった。
 でも、僕自身もいい刺激を受けました。やっぱり、やればできるじゃないか。まだまだオレたちの仕事も捨てたもんじゃないぜ、と。そして、なによりうれしかったのは、僕が帰ったあと、河原君の店『めらんじぇカワハラ』は、連日大ブレ-ク、大忙しとのこと。よかったなあ河原、しかし、来年こそ何か釣らしてくれよ。

 というわけで、ミチノも近々メニュ-を一新します。しばらく、おとなしい料理が続いて、自分でもいかんな、と思っていたので、今回はぶっ飛びます。乞う、ご期待。
by chefmessage | 2001-09-01 22:27
 この場合、おいしいというのは、ただ単に料理だけ、という意味ではありません。あなたの生活、いわば人生にとっておいしいかどうか、という意味だと思ってください。

 さて、まずは、ワインの味を知る方法から。
 これは、とにかく安物のワインを飲むことです。¥1,000前後のワイン。それを、5~6本飲んでみてください。しかる後に、どんと¥10,000くらいのワインを奮発してみる。するとあまりの味わいの違いに気がつくでしょう。要は、同じワインといっても、品質の差というか、幅があることに気がつくことです。そういうことを繰り返すうちに興味が出て来て、色々お勉強していくうちに、あなたにとって一番おいしいワイン、それも普段用と、とっておき用が見つかるようになるでしょう。それが、あなた自身のこだわり、というかセンスになるのです。

 レストランも同じです。
 現在は、カジュアル・リ-ズナブルが合い言葉で、本気でそれに取り組んでいるところもあるけれど、実は、それに便乗しているだけの安直な、商業主義優先のレストランも沢山できています。というのも、そういうタイプのレストランは、結構ごまかしのきく領域だからです。けれども、多くの人々が、それを見分けることができません。そして、大切なお金と時間を浪費しているのです。なぜなら、比べる対象を持っていないからです。
 文化的センス、それは選択肢が豊富にあって、そこから自分にふさわしいものはどれか悩むところから生まれてくるのです。

 もうおわかりでしょう。
 カジュアル・リ-ズナブルばかりに目を向けないで、たまには、いわゆる高級店にも足を運んでください。そして、その差を感じとってください。かならず違いはあるのだから。そこから、自分なりのこだわりで、普段使いのお店、とっておき用のお店を探してください。そうすれば、あなたの人生は、もっとおいしくなると思います。
 もちろん、ぼくのお店は、とっておき用に。たとえば、誕生日とか結婚記念日とか結婚披露のパ-ティ-とか、特別な日用に。なぜなら、ぼくは、あなたに感動してもらいたくて、思い出にしてもらいたくて、このお店をやっているんですから。
 といいながら、ぼくが仕事場で愛用しているはユニクロのジ-ンズです。でも、休みの日には履きません。だって、ユニクロは嫌いじゃないけど、それしかない世の中って、想像したくないでしょう?
by chefmessage | 2001-08-01 22:26

こころの栄養

 何だか今年はテレビとご縁があるようで MBSの「みかさつかさ」ではレギュラ-で出演させてもらっているのですが、それでなくとも少ないプライヴェ-トな時間が削られ、結構ハ-ドな毎日を送っています。(何しろ営業時間には必ずお店にいて、自分自身ですべての料理を仕上げるというのがポリシ-なので、TVの収録はプライヴェ-トの時間に行うことになるのです。)
 愛する子供たちに よそのおじさん扱いされないだろうかと、そんな心配までしながら、それでも頑張れるのは、外の世界へ出ていくことで、今までと違った人間関係がひろがって、それがとても新鮮だからでしょうか。

 例えば5月5日の「みかさつかさ」でご一緒した西村知美さん。天然ボケでけっこう注目されているようですが、本当にあのまんまです。プロデュ-サ-もディレクタ-も全員同じ意見だから間違いないでしょう。そして、全員がこういうのです。「ウラオモテがなくて、すごくいい子だ。」と。ワタシもそう思います。番組では、サ-モンサラダのクレ-プ包み、というお料理で、「子供の日のチマキをイメ-ジしてください」という設定にしたのですが、お料理を出した途端(本番中!)いきなり両手で持ってパクパク食べだしました。そして、目をクリクリさせて「おっいしぃ-」。カメラがとまるたびにまた食べている。そして、収録が終わったときには、結局最後まできれいに食べてしまっていました。その時、ワタシはセットの下手に引っ込んでいたのですが、彼女、ワタシの方に向かって、両手を合わせて、美味しかった・ごちそうさまと何度も何度も頭を下げるのです。本心からよろこんでますという仕草で、それが伝わってきて、ああ、この仕事やっててよかったなあと、こちらまでうれしくなり、その夜はぐっすり眠れ、西村知美さんにいっぱいお賽銭を投げてもらっている夢まで見ました。
 テレビに出ていて逆につらいのは、カメラ回っているときは「おいしい-」とか言ってるけど、 止まった途端 苦労して作ったお料理もう食べなくなる人が結構いることです。お口に合わなかったかもしれないし、お腹がいっぱいなのかもしれないし、ダイエットしているかもしれないけれど、お料理が泣いているような気がして。だから、西村知美さんは新鮮でした。

 そしてもうひとり、そういううれしさで思い出す人は、財津一郎さんでしょうか。
 その時は冬だったので、テ-マは松葉ガニでした。まず、大判のガラス皿一面に松葉ガニのカルパッチオ。これはカメラ映えするよう、量も多めだったのですが、それを財津さんが一口食べて、いきなり席を立って、タケモトピアノ(?)のノリで踊り出した。その後ト-クがあってカメラが止まった後、財津さんもう一度食べだして、結局、全部たいらげた。二品目は、カニのリゾット、これも結構量が多かったのにドンドン食べてる。そこで心配になって声をかけました。「財津さん、無理なら残していただいていいですよ。」すると彼がワタシの方を向いてこういいました。「いやぁ、昔から女房には苦労かけててねえ、今ここにいたら食べさせてやりたいんだけど東京にいるから、かわりにぼくが全部食べてあげてるの。」そして食べ終わって、席を立ち、顔をぐっとワタシの顔に近づけて「料理って奥が深いねぇ、ありがとう。」この会話やらせじゃないんですよ。カメラ回ってないんだから。 
 本当にいい人なんだなぁ、と思ってしまうじゃないですか。そして次にまたチャンスがあったらもっといい料理出してあげたい、と。
 その昔、レストランは栄養をつけに行くところでした。けれども今は、こころの栄養をつけるためにレストランへ行く時代だと思います。そのために、我々は努力をしているのです。そして、お客さんの素直な喜びがこちらに伝わってきたら、これはもう銭カネの問題じゃない、もっといい仕事をしなければ、ということになるのです。
 そんな、料理を出す側と食べる側との、素直な心のやりとりは、お互いの人生の栄養になると思うのですが、いかがでしょうか。

 さて、テレビの話題ついでにもうひとつ。「みかさつかさ」に出している料理のレシピがホ-ムペ-ジに出ています。興味のある方は「みかさつかさ」のサイトを見て下さい。
by chefmessage | 2001-06-01 22:24

店名について

 お客様によく尋ねられるのですが、店名の “ル・トゥ-ルビヨン” とはフランス語で “つむじ風”とか“旋風”とか言う意味です。
 随分と威勢の良いネ-ミングですが、元々は、それを意図していたのではありません。
由来は、フランス修行時代に、ふと目にしたエルメスのスカ-フの柄にあるのです。それは、中心から外側に向かっていろんな色と模様の葉っぱが、大きくなりながら渦をまくように拡がっていく図柄で、トゥ-ルビヨンと名付けられていました。それを見た時、とても印象に残りました。
 だって不思議じゃないですか?そこに描かれているのはいろんな葉っぱであって、つむじ風ではないのですから。
 姿は見えないけれど、舞う葉っぱの動きで存在を明らかにする。 なんだかスカ-フなのに妙に哲学的で、フランス人らしいと、感心してしまいました。
 そして、いつか自分のお店が持てたら、それを拝借してやろうと思ったのです。
今から15年前、32歳の時でした。いつかは俺も、それだけが心の支えだったような気がします。 だったら、夢が実現した時、何故その名前だけにしなかったんだ、という苦言はごもっとも。
 なにしろ、自分たちでさえ、電話で正式名称がいえないくらい長ったらしい名前のレストランである、というのが現状なのですから。
すみません、土壇場になって、どうしても目立ちたくなったんです。
でも、今はまだいいですよ、ミチノがシェフの名前であるということが、おかげさまで少しはご理解いただけるようになったから。
 それまでは、「ミチノって、どういう意味ですか、」と聞かれたり、「このややこしい名前なんとかならんのか、」と叱られたりで、ほんとに改名したい時期もあったんですから。でも、性格が依怙地だから、そのまんまで11年たってしまいましたけど。
 でも、興味深いことに、地方によってうちの店の名前って覚えられ方がちがうのです。
だいたい関東の方は、「ル・トゥ-ルビヨンですか」と電話で聞かれます。
関西の方は、ストレ-トに「ミチノですか」になります。どちらでもいいのですが、そういうのって、おもしろくありません?
 それと、僕自身が時計マニアなので、よく、時計のトゥ-ルビヨンに憧れて命名されたのですか、と尋ねられることがありますが、それはありません。僕には、残念ながら、あのシステムが何故あんなに高価なのか理解できません。作るのが難しいのはわかりますが、むしろ現代のように、一つ一つのパ-ツの精度があがってしまうと、ああいう複雑な機構は、必要ないと思うのです。
まあ、趣味の工芸品といいましょうか。だから、宝くじでも当たらないかぎり買わないと思います。
 それから、時計に関してこれは余談になりますが、このごろ、いわゆる最先端のオシャレ人間の皆さんが、こぞってフランク・ミュ-ラ-をはめておられますが、僕自身は嫌いです。自分を自分でカリスマ化して、それで馬鹿高い値段で製品を売りさばくシステムって、危なくないですか? だって、ミュ-ラ-の時計って、デザインと仕上げはいいけれど、中身は結構ありきたりだと思うんだけど。 それを、なんでもかんでも自分が発明したようにふれこむのはどうかなあ。うさんくさいなあ。このごろ、平気で他人のデザインぱくっているみたいだし。
 などと言っていると、あ、お客様が来られたようです。さて、透明になってつむじ風に変身しなくては。
 それでは、また。
by chefmessage | 2001-05-01 22:23
 これはワインインスティチュ-トというところが主宰する、カリフォルニアワインの広報販売促進のキャンペ-ンです。

 いろんなレストランが、ある一定の期間、何種類かのカリフォルニアワインをグラスで提供して、その様子を覆面審査員が色々な角度から採点し、見事優勝したお店は、カリフォルニアにご招待。と言うもので、今回が何回目か知らないけど、うちのお店は去年から参加しています。

 もともと開店当初から、ワインリストにオ-パスワンをずらずら並べていたくらいだったから、カリフォルニアのワインは嫌いじゃなかったし、10年もお店をやっていればマンネリもでてくるわけで、そういう意味ではいい気分転換になるかもしれないな、と参加を決めてお勉強を始めたとたん、生来の気質から、とことんやらねばすまされなくなって、おかげで、損得抜きの仕入れで、膨大な在庫を抱え込む羽目になってしまったのですが、それはまあこの際置いておいて。

 こうして、選びに選んだワイン、白5種類・赤5種類まあ初心者にはこれでいいか的なものから、こんなものグラスで出してどうするんだ的なものまで、自信満々のチョイスで審査に臨んだというわけです。

 ところが、結果は10点満点の7点.。後から送られてきた審査員のレポ-トを読むと 「昼間からお酒を勧められたのでびっくりした。」残念ながらうちはお高い店なので、審査員は昼間来られたのですが、これがミエミエの雰囲気の女性二人組だから、すぐばれるんだなぁ。じゃあ、あなたは何しに来たの?と思うのはワタシだけでしょうか。
 そして、ワインインスティチュ-トからは、 「残念ながら貴店は優勝されませんでした。来年は頑張ってくださいね。」なんてコメントが届いたというわけです。
 なるほど!結局は大バコで、種類がいっぱいあって、ワイワイやるのがいいわけね、その方がワインも沢山売れるもんね。 「いえいえ」 、とワインインスティチュ-トの方はたぶん答えられると思います。 「小さなお店でも、すばらしいサ-ビスぶりで優勝されたところもございます。例えば豊中の有名イタリアンKさんのところのように。」
 でもワタシはKさんから、優勝のヒケツを聞いたことがあります。曰く、「審査員はすぐわかるから、思い切りヨイショして、サ-ビスにタダでワインをおまけしてあげればいいんです。」
 ある酒販店の方も言っておられました。 「審査員だと思ったらいろんな物をいっぱいあげればいいのよ。」
 そういえば、うちに来られた審査員も、帰られる時に、まずお店のマッチに手を伸ばされました。 「これもらっていいですか」。 次にお店のカ-ド、次に神戸大丸ア-トミュ-ジアムの案内、次になんとダビドフの葉巻用のマッチに手を伸ばして 「これもらっていいですか」。 なぜ!何のために!!¥3,000のランチのお客さんに、1箱¥500もする葉巻用のマッチいちいちあげていたら、いったいウチはどうなるんだ!!!
 でもあとから思いました。あのとき、あのマッチあげてたらもう少し点数ふえてたかなぁ。なんてね。

 では何故今年もこりずに参加したか、といいますと、これはカリフォルニアワインのお勉強に熱中していたときに、お知り合いになったインポ-タ-の人々と、また会いたいからです。
 とくに北海道にあるクラモチコ-ポレ-ションの倉持靖彦さん!ワインの問い合わせをしたら、なんと、ウチの店に食事に来られました。そして、ワタシの料理を食べて、「このお店なら自分の輸入しているワイン全部おいてほしい」、と言われました。聞けば、自分の納得できるお店じゃないと、苦労して輸入したワイン、特にレア物は置いてほしくない、とのこと。いまどき、こんなワガママ、はっきり言える人はいないですよ。

その時、聞いた話が忘れられません。
 「ワイン探しで、オレゴンの片田舎の空港に夜間一人で降り立ったとき、あたりは真っ暗で街の灯りも見えない。オレどうしてこんなとこまで来たんだろう、とさみしかったですよぉ、それで結局ね、ワイン売ってくんなかったです。」なんてニコニコしながら言うもんだから、こっちもその気になるじゃないですか。この人のワイン全部買いたいってね。どうしてそこまで、と思うのです。
 岩見沢で酒屋さんやってればそこそこやっていけるだろうに。
そういえば今年のナパのオ-クションでルイスのワインを最高値で競り落として、話題になったのもこの人でした。

でも、これはワタシ自身にもあてはまることでもあるのです。
 ワタシ自身がたいそうお気に入りのフレンチレストランが神戸の御影にあって、そこのシェフと話していたとき、彼がこう尋ねたことがあります。「ミチノさん、どうして悩んで、苦労して人と違う料理やろうとするんですか。しみじみ美味しいあたりまえの料理でいいじゃないですか。」これはワタシがある本に載せた、比内鶏の冷たいフリカッセ(クリ-ム煮)という料理を彼が新鮮に記憶していて、それを受けての発言でした。
 ワタシはこう答えました。「もちろんしみじみした美味しい料理もできる自信はある。でも、やりたくないし、自分のやるべき仕事じゃないとおもう。」と。

 例えば山登りする人がいる。誰も登ったことのない山の天辺に立ちたいと思う。
そこに理由はありません。ただ、そうしたいのです。強いて言うなら、そういう風に生まれたのです。
 だからといって、趣味の登山の人々を軽んじたりはしない、ただ、生き方の違いがあるだけなのです。
 残念ながら、苦労に苦労を重ねて誰も登ったことのない山のてっぺんに立ったとしても、それで世の中がよくなるもんじゃない。でも、登りたいのです。
 けれども、ある特定の人々には感動を与えることができるかもしれません。あいつもあんなに頑張っているんだから、自分もやればできるかもしれない、という形で。あるいはただ単純に元気とか勇気みたいな気を相手に与えるとか。

 だから今年も倉持さんをはじめとするインポ-タ-の人々に会いたくて、話をしたくて、参加することにしたのです。

さて今年の当店のグラスワインは、去年にもましてくせ者だらけの予定です。

 まず白ワインは、セリ-ンのソ-ヴィニヨンブラン。ダラヴァルやアロ-ホのワインメ-カ-、ミア.クライン女史自身の作るワインです。これが代表選手。
 赤ワインは、ショ-ン.サックレ-という人が、自宅の裏庭で瓶詰めしているというプレアディスというワイン。いろんな種類のブドウのブレンドで、何が何パ-セント入っているか、本人もよくわからないというもの。
 栃木県足利市(それ、どこ?)にある布袋ワインズ、というあやしい名前の(失礼!)、でもまじめそうなインポ-タ-が取り扱っています。

そんなのばっかり集めてやろうと思っているから、ゾクゾクしてしまいます。
どうしてそこまで仲間大集合、といったところでしょうか。でもおそらく、ワイン作っている人も、輸入している人も、そのワインと自分の料理をどうあわせようかと悩んでいる人も、そして、それを味わう人も、みんな、それぞれの山のてっぺんに立ちたいと願っているのだと思います。
 そんな願いが集まって、高まっていって、大げさかもしれないけれど、文化というものが生み出されていくのではないでしょうか。大量に売れないだろうし、儲からないだろうし、人にはなかなか理解してもらえないかもしれないけど。

でも、そういうキッカケを用意してくれたから、ワインインスティチュ-トさんに文句ばっかり言わず、お礼を言うべきかもしれませんね。

さあ4月から当店もバイザグラスはじめます。
ワインリストも書いておくから、みなさん楽しみに来てください。

白ワイン       ブドウ         1/2グラス   グラス
フィッシャ-     シャルドネ       ¥400   ¥800
セリ-ン       ソ-ヴィニヨン・ブラン ¥700   ¥1,300
バニスタ-・ロキオリ シャルドネ       ¥800   ¥1,500
ナヴァロ       ゲヴェルツ       ¥500   ¥900

赤ワイン                   1/2グラス   グラス
ベリンジャ-     カベルネ        ¥600   ¥1,100
ス-ヴェラン     カベルネ        ¥700   ¥1,400
フェッツァ-     ピノ・ノワ-ル     ¥800   ¥1,500
リッジ        ジンファンデル     ¥600   ¥1,100
ショ-ンサックレ-  ブレンド        ¥500   ¥900
by chefmessage | 2001-04-01 22:12