クリスマスの灯り
今年のクリスマスほど静かで暗いクリスマスは経験したことがありません。
ぼくのレストランがある大阪市福島区は飲食店が星の数ほどある地域なのですが、午後9時くらいになると、営業時間短縮要請もあって多くの店が灯りを消します。今日は12月の23日、明日はクリスマスイブだというのに。
うちの店でも予約は芳しくありません。浮き立つような気分ではない。でも仕事はたくさんあって、スタッフもアルバイトも忙しく働いています。「蘇ボックス」のクリスマスバージョンが、告知すると同時に完売になったからです。
4月の末から始めたテイクアウトの「蘇ボックス」は、全ての作業を自分たちだけでこなしています。受注から発送までのメールのやり取りやスケジュール調整、それから梱包に宅急便の受け渡しまで、新任の女性マネージャーがやってくれています。料理は、ぼくと勤続11年になる凄腕美人スーシェフが、スイーツセットを含むお菓子は全てマダムが作っています。個別の包装はアルバイトが担当して、総勢4人とアルバイト1名で「蘇ボックス」「スイーツボックス」は出来上がっています。
内容は二ヶ月くらいで更新して現在はシリーズ4になっていますが、3で生産者の皆さんと、4ではパンの名店「ル・シュクレクール」とコラボすることで相乗効果が生まれて、現在も受注は途切れることがありません。
そして何より嬉しいことは、12月1日から開始した4は、8割がリピーターさんからの注文であったということ。
これには訳があります。
マネージャーから厨房に回ってくる注文スケジュールには、RとかWとかBDとかの但し書きが添えられていることがあります。リピーター、結婚記念日、お誕生日です。それぞれに、おまけがつきます。袋に入った小さなお菓子や、BDの場合にはメッセージと名前の入ったクッキーなど。これはぼくの考えたことではありません。マネージャーとマダムの発案です。
そういう気遣いの積み重ねが功を奏したということなのでしょう。たくさんのリピーターさんを得ることができました。
また、もう一つの発見は、メールでのやり取りでお顔も知らない方々なのに、お礼のメールがたくさん届くことです。
「一人娘が初めてもらったお給料でご馳走してくれました。親子3人、忘れられない夜になりました」というのにはグッときました。「一緒に食べた母が、今年一番の美味しさだと言って喜びました」、「90歳の父はブイヤベースが一番気に入ったようです」など、その様子が目に浮かぶようでした。
そのようなお礼のメールは、マネージャーがプリントアウトして渡してくれます。一番新しいメールには、盛り付け写真が添付されていました。そして、「これで何があっても乗り切れると思います」という言葉で締め括られていました。
それを読んで、思わずぼくは自分の店のスタッフに目をやりました。朝から晩まで、本当にみんなよくやってくれています。その一人一人にぼくは言いたい。君たちは本当に立派な仕事をしている。ぼくは君たちを心から尊敬し、誇りに思っている。そして、そんなスタッフが丹精込めて作った「蘇ボックス」が今日もたくさんの人のお家に届けられます。
街は静かです。でも、お家の中で、家族一人一人の心に光は灯ります。そのお手伝いができることで、ぼくたちもまた勇気をいただいているのです。
感謝を込めて皆さんに。
「メリークリスマス!」忘れられない思い出となりますように。