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ミチノ・ル・トゥールビヨンシェフ道野 正のオフィシャルサイト


by chefmessage
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シェフの夏休み

 先日、ある方から、「テレビの仕事に熱心なあまり、お店の料理のレベルがさがるなんてことないでしょうね。」と質問されました。たしかに、そんなお店が多いのも実状で、だから、そう思っている方たくさんいるかもしれないので、この際お答えいたします。
 そんなことはありません。テレビの収録は2週間に1回、1回で2本分録ります。そして、その収録日は、うちの定休日である水曜日です。というか、水曜だったので引き受けたのです。だから、営業日には、あいかわらず店にいて、かならず料理作っています。
 「毎週、テレビに出ているのに、ちゃんとお店で仕事もしているシェフって、あまりいないですよね。」と、このあいだも同業者に感心されてしまいました。でも、それで当たり前だと思うのですが。ただ、正直言って、少し疲れます。それが、日常の業務に差し支えてないかと問われれば、なくはないでしょうね。だから、スタッフを強化したり、いろいろ策を練って対処していますが、やっぱり休むのが一番かな、ということで、今年の夏は4日間お休みをいただきました。
 毎年、ミチノの夏休みは、北海道で過ごすことになっています。というのも、うちでス-シェフだった河原という男が旭川で自分のお店をやっていて、彼も僕と同じく釣り好きなので、いっぱいポイントの情報なんか集めてくれていて、彼のところを拠点に、鱒をルア-で釣りに行く、というのが、毎年恒例の行事だからです。
 去年は、オホ-ツク海に向かって、胸まで水に入り、延々とルア-を投げ続けたのですが、ヒット2回、釣果はゼロと散々だったので、今年こそ、と意気込んで、電話で何度も意見交換。その合間に、お互いの店の近況を話し合う、ということをしていたのですが、ある時河原君が、「もう、店やめようかなと思う時があります。」と言うのです。何故かと問えば、やはりお客さんが少ない。だから、今以上に値段を落として、もっと食べてもらいやすい料理、例えばパスタとか、そんなメニュ-増やしたほうがいいんじゃないか、でも、自分としては、ある程度は納得のいく料理で勝負したい、でも経営は苦しくて。
 僕も、旭川の、いわゆる高級フランス料理店で働いたことがあります。もう13年も前のことですが、そのときも、「お宅はパンだけで、ライスがないからお腹いっぱいにならない。」という理由で来てくれない人が随分いて、面食らったものです。今では、もうそんなことないだろうけど、旭川という街も、地場産業の沈下で景気が悪く、年々、人口が減っていっているようなところなので、彼の店のような、どちらかというとマニアックで、ちょっと贅沢な感じのするレストランはしんどいだろうな、ということは想像がつきます。でも、だからといって弱音なんか吐くなよ、と、僕の立場としては言いたくなるじゃないですか。旭川で今の奥さんと出会って結婚して、子供ができて、自分のお店も持って、熱心なスタッフにも恵まれているんだから。プライドも大事だけど妥協も大事で、そのへんうまく折り合いつけて、もう少し頑張ってみろよ、と。
 でも、言葉だけじゃなぁ、オレも妥協できない人間で、彼もその辺よく知っているから、説得力ないよなぁ、と思ったのです。そこで、またお人好しが口をついて出てしまったんですね。「じゃあ、お前んとこの店の刺激になるよう、オレがフェアをやってやる。」
 今まで、この言葉だけは口にしたくなかったのです。夏の北海道、良き友と釣り三昧。なにより楽しみだったんだから。だから、一晩だけやぞ、他の日は釣りやぞ、と念を押して、メニュ-書いて、ルセットをfaxで送って、ワインを選び、食材の手配して。すると、しばらくして、河原君から電話が来ました。「反響がすごくて、一晩で二回転させないと入り切りません。それも、かなりお断りしてなんです。」。ミチノはきっぱり答えました。「二晩やったる。」
 結果は大盛況。自分でもたじろぐほど褒めちぎられ、雑誌と新聞の取材まで入って、やれ、このあと一席設けさせてくれ、とか、今年の冬にも来てくれ(冬の北海道には絶対行きたくない。)、とか、うれしい悲鳴だったのですが、さて、二晩のフェアを無事終えて、その後、不眠不休で車をぶっとばし、大雪山の麓は大雪ダムにて、夜明け前から釣りは開始されたのです。でも、台風の接近による雨で、午前中しか竿を出せず、結果は、今年も惨敗であった。
 でも、僕自身もいい刺激を受けました。やっぱり、やればできるじゃないか。まだまだオレたちの仕事も捨てたもんじゃないぜ、と。そして、なによりうれしかったのは、僕が帰ったあと、河原君の店『めらんじぇカワハラ』は、連日大ブレ-ク、大忙しとのこと。よかったなあ河原、しかし、来年こそ何か釣らしてくれよ。

 というわけで、ミチノも近々メニュ-を一新します。しばらく、おとなしい料理が続いて、自分でもいかんな、と思っていたので、今回はぶっ飛びます。乞う、ご期待。
# by chefmessage | 2001-09-01 22:27
 この場合、おいしいというのは、ただ単に料理だけ、という意味ではありません。あなたの生活、いわば人生にとっておいしいかどうか、という意味だと思ってください。

 さて、まずは、ワインの味を知る方法から。
 これは、とにかく安物のワインを飲むことです。¥1,000前後のワイン。それを、5~6本飲んでみてください。しかる後に、どんと¥10,000くらいのワインを奮発してみる。するとあまりの味わいの違いに気がつくでしょう。要は、同じワインといっても、品質の差というか、幅があることに気がつくことです。そういうことを繰り返すうちに興味が出て来て、色々お勉強していくうちに、あなたにとって一番おいしいワイン、それも普段用と、とっておき用が見つかるようになるでしょう。それが、あなた自身のこだわり、というかセンスになるのです。

 レストランも同じです。
 現在は、カジュアル・リ-ズナブルが合い言葉で、本気でそれに取り組んでいるところもあるけれど、実は、それに便乗しているだけの安直な、商業主義優先のレストランも沢山できています。というのも、そういうタイプのレストランは、結構ごまかしのきく領域だからです。けれども、多くの人々が、それを見分けることができません。そして、大切なお金と時間を浪費しているのです。なぜなら、比べる対象を持っていないからです。
 文化的センス、それは選択肢が豊富にあって、そこから自分にふさわしいものはどれか悩むところから生まれてくるのです。

 もうおわかりでしょう。
 カジュアル・リ-ズナブルばかりに目を向けないで、たまには、いわゆる高級店にも足を運んでください。そして、その差を感じとってください。かならず違いはあるのだから。そこから、自分なりのこだわりで、普段使いのお店、とっておき用のお店を探してください。そうすれば、あなたの人生は、もっとおいしくなると思います。
 もちろん、ぼくのお店は、とっておき用に。たとえば、誕生日とか結婚記念日とか結婚披露のパ-ティ-とか、特別な日用に。なぜなら、ぼくは、あなたに感動してもらいたくて、思い出にしてもらいたくて、このお店をやっているんですから。
 といいながら、ぼくが仕事場で愛用しているはユニクロのジ-ンズです。でも、休みの日には履きません。だって、ユニクロは嫌いじゃないけど、それしかない世の中って、想像したくないでしょう?
# by chefmessage | 2001-08-01 22:26

こころの栄養

 何だか今年はテレビとご縁があるようで MBSの「みかさつかさ」ではレギュラ-で出演させてもらっているのですが、それでなくとも少ないプライヴェ-トな時間が削られ、結構ハ-ドな毎日を送っています。(何しろ営業時間には必ずお店にいて、自分自身ですべての料理を仕上げるというのがポリシ-なので、TVの収録はプライヴェ-トの時間に行うことになるのです。)
 愛する子供たちに よそのおじさん扱いされないだろうかと、そんな心配までしながら、それでも頑張れるのは、外の世界へ出ていくことで、今までと違った人間関係がひろがって、それがとても新鮮だからでしょうか。

 例えば5月5日の「みかさつかさ」でご一緒した西村知美さん。天然ボケでけっこう注目されているようですが、本当にあのまんまです。プロデュ-サ-もディレクタ-も全員同じ意見だから間違いないでしょう。そして、全員がこういうのです。「ウラオモテがなくて、すごくいい子だ。」と。ワタシもそう思います。番組では、サ-モンサラダのクレ-プ包み、というお料理で、「子供の日のチマキをイメ-ジしてください」という設定にしたのですが、お料理を出した途端(本番中!)いきなり両手で持ってパクパク食べだしました。そして、目をクリクリさせて「おっいしぃ-」。カメラがとまるたびにまた食べている。そして、収録が終わったときには、結局最後まできれいに食べてしまっていました。その時、ワタシはセットの下手に引っ込んでいたのですが、彼女、ワタシの方に向かって、両手を合わせて、美味しかった・ごちそうさまと何度も何度も頭を下げるのです。本心からよろこんでますという仕草で、それが伝わってきて、ああ、この仕事やっててよかったなあと、こちらまでうれしくなり、その夜はぐっすり眠れ、西村知美さんにいっぱいお賽銭を投げてもらっている夢まで見ました。
 テレビに出ていて逆につらいのは、カメラ回っているときは「おいしい-」とか言ってるけど、 止まった途端 苦労して作ったお料理もう食べなくなる人が結構いることです。お口に合わなかったかもしれないし、お腹がいっぱいなのかもしれないし、ダイエットしているかもしれないけれど、お料理が泣いているような気がして。だから、西村知美さんは新鮮でした。

 そしてもうひとり、そういううれしさで思い出す人は、財津一郎さんでしょうか。
 その時は冬だったので、テ-マは松葉ガニでした。まず、大判のガラス皿一面に松葉ガニのカルパッチオ。これはカメラ映えするよう、量も多めだったのですが、それを財津さんが一口食べて、いきなり席を立って、タケモトピアノ(?)のノリで踊り出した。その後ト-クがあってカメラが止まった後、財津さんもう一度食べだして、結局、全部たいらげた。二品目は、カニのリゾット、これも結構量が多かったのにドンドン食べてる。そこで心配になって声をかけました。「財津さん、無理なら残していただいていいですよ。」すると彼がワタシの方を向いてこういいました。「いやぁ、昔から女房には苦労かけててねえ、今ここにいたら食べさせてやりたいんだけど東京にいるから、かわりにぼくが全部食べてあげてるの。」そして食べ終わって、席を立ち、顔をぐっとワタシの顔に近づけて「料理って奥が深いねぇ、ありがとう。」この会話やらせじゃないんですよ。カメラ回ってないんだから。 
 本当にいい人なんだなぁ、と思ってしまうじゃないですか。そして次にまたチャンスがあったらもっといい料理出してあげたい、と。
 その昔、レストランは栄養をつけに行くところでした。けれども今は、こころの栄養をつけるためにレストランへ行く時代だと思います。そのために、我々は努力をしているのです。そして、お客さんの素直な喜びがこちらに伝わってきたら、これはもう銭カネの問題じゃない、もっといい仕事をしなければ、ということになるのです。
 そんな、料理を出す側と食べる側との、素直な心のやりとりは、お互いの人生の栄養になると思うのですが、いかがでしょうか。

 さて、テレビの話題ついでにもうひとつ。「みかさつかさ」に出している料理のレシピがホ-ムペ-ジに出ています。興味のある方は「みかさつかさ」のサイトを見て下さい。
# by chefmessage | 2001-06-01 22:24