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ミチノ・ル・トゥールビヨンシェフ道野 正のオフィシャルサイト


by chefmessage
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今年も元気に!

 毎週テレビに出てるっていうのは、けっこう影響力があるもので、お問い合わせの電話が随分増えました。でも、残念なことに、コ-スのお値段を聞いて「やっぱりやめておきます」というお返事も増えました。
 うちのお店って、値段高いですか? 本人はあまりそう思ってはいなかったのです。とにかく、どこにも負けないお料理を、というコンセプトで突っ走ってきましたから。そんな話を、ある常連のお客様としていたら、その方がこうおっしゃいました。
 「自分たちは、来て食事をして、納得しているからぜんぜん高いとは思わない、むしろ、これじゃもうからんやろな、と思う。でも来たことのない人が電話で値段を聞いたら、こんな時代やから高い、と思うんとちがう?」 やっぱり、そうなんですかね。 でもそのお客様は続けてこう話されました。「せっかくの腕なんやから、もっと、たくさんのお客さんにふるうべきやで。それに、僕らの息子や娘が、親の財布をアテにせず、自前でこれるコ-スがあったら、僕らもうれしいね。」そうか、そういうことか、と妙に納得してしまったのです。親にも、子にも支持されるレストラン、うん、かっこいいな、と。
 それに、前から気になっていたことがあるのです。それは何かと言いますと、うちのお客さん、ほとんどが、わざわざ来られる方たちで、地域の方って意外と少ない。皆さん、うちのお店のことはご存じなんだけど、敷居が高い、とおっしゃる。それもこの際解決しようかなと。
 そこで、ついにやることにしました。
 価格破壊ってやつ。
 もちろん僕自身のですが。
  まず、ランチは¥2,800からです。オ-ドヴル3種類、メインは3種類からチョイス。

 次に、ディナ-。これは革命ですよ。ア・ラ・カルトの中から、オ-ドヴルとメインを選んで、¥5,500という新コ-スの設定。自分でも信じられません。なぜって、うちのお店、ア・ラ・カルトからオ-ドヴルとメインを選ぶディナ-は、¥12,000だったから。
もちろん、安けりゃいいんだろう、という気持ちでやるつもりはありません。力の入れ方は同じです。そういう人間なんですから。むしろ、僕の気持ちは、皆さんに愛されるレストランになろう、ということにあります。というか、その言葉自体、やっと気づいたというのが本音なのですから。大人になるのに、随分時間がかかりました。

  そのうえ、これはワインマニアの方に朗報です。今まで、断り続けてきたワインの持ち込みを解禁にします。ただし、持ち込み料は、1本につき¥2,000いただきます。それが高いのか安いのか、正直わからないのですが、なにしろこちらは1、700本の在庫を抱える身です。うちのを飲んで下さいというのがいつわりのない気持ちなのですが、あまりのリクエストの多さにお答えすることにしました。
  開店して12年目、はじめての試みを、今年はたくさんやろうとしています。たちどまらず、もっと前に進んでいこうとおもいます。皆さん、どうか力を貸して下さい。そして、みんなで、元気を分かち合いましょう。
# by chefmessage | 2002-01-10 22:38

毒見

このごろ電話などでお問い合わせが多いのが、例のBSE(狂牛病-牛海綿状脳症)に、どう対処していますか、ということです。そのことについて今回は詳しくお答えします。

 まず食材については、肉類は現在、ヨ-ロッパ産のものは、ほとんど輸入がストップしています。
 かろうじてうちで使っているものとしては、鳩、ウズラ、フォアグラがフランス産です。これらには、BSEそのものが存在を確認されていません。

 その他の肉類で、使っている物としては、リ・ド・ヴォ、仔牛、仔羊、牛ロ-ス、黒豚、地鶏、がありますが、リ・ド・ヴォ、仔牛、仔羊、それからフォン・ド・ヴォに使う仔牛の骨は、すべてオ-ストラリア産のものを選んでいます。
 オ-ストラリアは、BSEとその原因となったと疑われているTSE(スクレイピ-、羊の伝染症海綿状脳症)の危険性が世界で最も低いと言われている国です。
というのは、オ-ストラリアは1966年以降オ-ストラリアと同じく、BSE・TSEの存在しないニュ-ジ-ランドの骨粉製品しか輸入しておらず、現在では法律によって、その骨粉すら使用してはいけない、すなわち反芻動物(はんすうどうぶつ)に肉・骨粉飼料を与えることを全面禁止している国であるからです。
 また、国として定期的かつ系統的に病害監視プログラムを実施し、屠殺現場には獣医師を配置させるということまでしています。ですから、少なくとも病害に関しては問題ないのですが、ただ私としては、おいしくなくては許せないので、まず、仔牛・仔羊はともに生後6ヶ月までのものとし、なおかつ母乳と牧草しか口にしていないものと限定して、いろいろなところからサンプルを取り寄せました。その結果、いちばん自分の舌にあったものを選んで使っています。
これは、リ・ド・ヴォも、フォン・ド・ヴォに使う仔牛の骨も同じです。
 まず、ミチノがお毒味してさしあげました。
 
 でもそれでも、どうしても、フォン・ド・ヴォが気になるという方は、おっしゃってください。
 じつは、そのうちフォン・ド・ヴォもくどいと言われる時代が来るのではないかと考えていたミチノは、フォン・ド・ヴォを全く使わない料理のレシピをしっかりもっているので、いくらでも対応できますから。
 
 さて、後は国内産のお肉たちですが、牛ロ-スは松阪のものを使っています。これは一般の飼育とは方法を異にしており、餌は完全に穀物と牧草です。肉・骨粉飼料があるのも知らなかったという人達がいるくらい、伝統的に植物飼料しか、与えていません。そのうえ、正肉なので問題はないと思います。
 つぎに、黒豚ですが、これは契約している飼育場がはっきりしている安全な無菌豚しか買っていません。使っているのはフィレのみです。また地鶏は日向産の赤鶏で、半ば放し飼い、餌は穀類のみです。
 そして最後にゼラチン。そんなに沢山使う物ではありませんが、心配な方もおられるでしょう。昔は、鯨の骨から作っていたのですが、現在うちで使っているのは豚の骨が原料です。これも問題は発生していません。BSE・TSEの疑惑の範疇外です。

 さあ、これでご理解いただけたでしょうか。私の仕事は人を幸せにすることです。安全で美味しい食材を厳選するのは当然です。ただ、現実としては、食べ物は二極化しつつあります。

 一つは経済的な効率を優先した食べ物です。いかに無駄をなくし、短期間で実利を得るか。そのために、オ-トメ-ションとマニュアルの徹底化が行われています。それが、運動できないような狭い場所に閉じこめられて、昼も夜もなく、自然のサイクルを無視した栄養価の高いエサを与え続けられ、短期間で食肉にされる鶏や牛たちです。 あるいは、土に触れたことのない野菜たちです。そして、機械的に食べ物として製品化され、マニュアル化したサ-ヴィスで売られていくのです。
 そこには、働く人達の疑問を挟む余裕はありません。むしろ、それらは排除されていきます。そうでないと、単価を思い切り下げたのに、逆に利益が出るなんてことが起こるはずがないのです。そして、そのような組織の主は、こう豪語します。「人間の味覚は、5~6才までに決まる。だからファミリ-で来てくれれば、その子供たちが親になっても子供たちを連れてきてくる。それが続く限り、ファ-ストフ-ドは不滅だ!」と。
 でも、その思想と方法に対する警鐘が、今回の出来事には含まれているのではないでしょうか。
 かたや、その反動として、昔ながらの手間ひまかけて、を見直し安全で美味しい物を作ろうという人達も多く輩出してきています。
 そして、ミチノはそれらを探し求め、大切に調理し、マニュアルに陥らないサ-ヴィスで提供しようとしています。

 先日、なくなった落語家の古今亭志ん朝さんは、「落語なんてものに生涯かけるからイキなんだよ」と語っていたそうです。
 実は私も、フランス料理なんて、と心のどこかで思っています。べつに、この日本にはなくったっていいもんだ、と。
 でも、それに一所懸命なのも、志ん朝さんに見習えばイキではないか、と。そして、そのイキの中に 伝えたい、本当に大切なものがこめられているように、祈りながら、

    皆さんが来て下さるのを、
    今日もミチノは待っているのです。

 そこで朗報!
ランチがすごくかわりました。
オ-ドヴルとメインが3種類ずつから選べて、その上 値段もお得に!
いつか行ってやる、と思っている人、まずランチにきてください。
# by chefmessage | 2001-10-01 22:37

シェフの夏休み

 先日、ある方から、「テレビの仕事に熱心なあまり、お店の料理のレベルがさがるなんてことないでしょうね。」と質問されました。たしかに、そんなお店が多いのも実状で、だから、そう思っている方たくさんいるかもしれないので、この際お答えいたします。
 そんなことはありません。テレビの収録は2週間に1回、1回で2本分録ります。そして、その収録日は、うちの定休日である水曜日です。というか、水曜だったので引き受けたのです。だから、営業日には、あいかわらず店にいて、かならず料理作っています。
 「毎週、テレビに出ているのに、ちゃんとお店で仕事もしているシェフって、あまりいないですよね。」と、このあいだも同業者に感心されてしまいました。でも、それで当たり前だと思うのですが。ただ、正直言って、少し疲れます。それが、日常の業務に差し支えてないかと問われれば、なくはないでしょうね。だから、スタッフを強化したり、いろいろ策を練って対処していますが、やっぱり休むのが一番かな、ということで、今年の夏は4日間お休みをいただきました。
 毎年、ミチノの夏休みは、北海道で過ごすことになっています。というのも、うちでス-シェフだった河原という男が旭川で自分のお店をやっていて、彼も僕と同じく釣り好きなので、いっぱいポイントの情報なんか集めてくれていて、彼のところを拠点に、鱒をルア-で釣りに行く、というのが、毎年恒例の行事だからです。
 去年は、オホ-ツク海に向かって、胸まで水に入り、延々とルア-を投げ続けたのですが、ヒット2回、釣果はゼロと散々だったので、今年こそ、と意気込んで、電話で何度も意見交換。その合間に、お互いの店の近況を話し合う、ということをしていたのですが、ある時河原君が、「もう、店やめようかなと思う時があります。」と言うのです。何故かと問えば、やはりお客さんが少ない。だから、今以上に値段を落として、もっと食べてもらいやすい料理、例えばパスタとか、そんなメニュ-増やしたほうがいいんじゃないか、でも、自分としては、ある程度は納得のいく料理で勝負したい、でも経営は苦しくて。
 僕も、旭川の、いわゆる高級フランス料理店で働いたことがあります。もう13年も前のことですが、そのときも、「お宅はパンだけで、ライスがないからお腹いっぱいにならない。」という理由で来てくれない人が随分いて、面食らったものです。今では、もうそんなことないだろうけど、旭川という街も、地場産業の沈下で景気が悪く、年々、人口が減っていっているようなところなので、彼の店のような、どちらかというとマニアックで、ちょっと贅沢な感じのするレストランはしんどいだろうな、ということは想像がつきます。でも、だからといって弱音なんか吐くなよ、と、僕の立場としては言いたくなるじゃないですか。旭川で今の奥さんと出会って結婚して、子供ができて、自分のお店も持って、熱心なスタッフにも恵まれているんだから。プライドも大事だけど妥協も大事で、そのへんうまく折り合いつけて、もう少し頑張ってみろよ、と。
 でも、言葉だけじゃなぁ、オレも妥協できない人間で、彼もその辺よく知っているから、説得力ないよなぁ、と思ったのです。そこで、またお人好しが口をついて出てしまったんですね。「じゃあ、お前んとこの店の刺激になるよう、オレがフェアをやってやる。」
 今まで、この言葉だけは口にしたくなかったのです。夏の北海道、良き友と釣り三昧。なにより楽しみだったんだから。だから、一晩だけやぞ、他の日は釣りやぞ、と念を押して、メニュ-書いて、ルセットをfaxで送って、ワインを選び、食材の手配して。すると、しばらくして、河原君から電話が来ました。「反響がすごくて、一晩で二回転させないと入り切りません。それも、かなりお断りしてなんです。」。ミチノはきっぱり答えました。「二晩やったる。」
 結果は大盛況。自分でもたじろぐほど褒めちぎられ、雑誌と新聞の取材まで入って、やれ、このあと一席設けさせてくれ、とか、今年の冬にも来てくれ(冬の北海道には絶対行きたくない。)、とか、うれしい悲鳴だったのですが、さて、二晩のフェアを無事終えて、その後、不眠不休で車をぶっとばし、大雪山の麓は大雪ダムにて、夜明け前から釣りは開始されたのです。でも、台風の接近による雨で、午前中しか竿を出せず、結果は、今年も惨敗であった。
 でも、僕自身もいい刺激を受けました。やっぱり、やればできるじゃないか。まだまだオレたちの仕事も捨てたもんじゃないぜ、と。そして、なによりうれしかったのは、僕が帰ったあと、河原君の店『めらんじぇカワハラ』は、連日大ブレ-ク、大忙しとのこと。よかったなあ河原、しかし、来年こそ何か釣らしてくれよ。

 というわけで、ミチノも近々メニュ-を一新します。しばらく、おとなしい料理が続いて、自分でもいかんな、と思っていたので、今回はぶっ飛びます。乞う、ご期待。
# by chefmessage | 2001-09-01 22:27